乳腺症の免疫組織化学的特性の検討
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概要
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乳腺症は病理学的に多彩な組織変化を含み, 病態像についても十分に解明されていない.また生物学的性質や自然史についての知識が不十分なため, 臨床的に取扱いに際して, しばしば混乱を生じてきた.そこで本症を構成する組織成分の生物学的性質の相違を明らかにすることを目的として本研究を行った.腫瘤を形成し乳癌との鑑別のために生検した症例を対象として, 乳癌取扱い規約に従い9種類に分類し組織学的検討を行った.さらに乳癌発生の危険度が異なるとされている過形成群, アポクリン化生群および腺症群の3群を対象に, 隣接する正常乳腺部, および3群間において以下に示す生物学的差異について比較検討した.細胞増殖と細胞死および内分泌的感受性の点から, PCNA, Bcl-2, TUNEL法, およびERの発現を免疫組織化学的ないし組織化学的に検討した結果, 最も異なる性格を示したのはアポクリン化生であった.アポクリン化生は30歳以降の各年齢層で最も頻度が高い成分であり, かつPCNAの局在性の結果から正常乳腺上皮, 腺症群および過形成部よりも有意に増殖能が高いと考えられた.またBcl-2とアポトーシス細胞の発現程度かたアポクリン化生は腺症群, 過形成群とは異なった細胞死の制御がなされていると推測された.一方, 各組織群でのERの発現は, 隣接する正常乳腺と比較して差が認められなかった.これらの結果から, 本症は生物学的にも多様性を有していることが明らかとなったとともに, 今後さらにアポクリン化生の生物学的性質の特性に着目した比較検討が乳腺症の病態の解明に重要と思われた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1998-02-01
著者
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