S 3800 B錠, Enavid錠による経口避妊の副作用に関する研究
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概要
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本学附属病院婦人科外来を訪れた20名の避妊希望者に合成Gestagen(以下合成Gと略す)による経口避妊を行い, その副作用を検討する一方, 家兎を用いて動物実験を行い主として血栓性静脈炎に関連して血液凝固能, 肝機能, 主要臓器の組織にあたえる影響を検討し次の成績を得た.〔I〕動物実験 i)血液凝固能, 施行した一連の検査中, 統計学上有意差をもって凝固亢進を示したのはEnavid 0.1mg/kg/日投与群に於けるCa再加凝固時間及びTEGのγ, γ+k値, 投与全群に於けるMa値, Enavid 1.0mg/kg/日投与群とS 3800B 0.1mg/kg/日投与群に於ける血漿Fibrinogen値, S 3800B 0.1mg/kg/日投与群に於ける血小板粘着性等であり此の亢進はFibrinogenの増量及び血小板粘着性の増加に関連あると推定される成績を得た. ii)肝機能検査中異常を認めたのは血清Transamilase値であるがSGOTではS 3800B 0.1mg/kg/日投与群を除く全群, SGPTでは全群に有意な高値を認めた. 0.1mg/kg/日投与群に比し1.0mg/kg/日投与群に高値の多い点, 薬剤の影響と考えられるが他の肝機能検査成績から見て肝機能障害によるものか否かは決定し難い. iii)組織学的検索では軽微な下垂体の変化を除いて全く影響を認めなかった.〔II〕臨床実験 避妊者20名延169投与周期の臨床観察では次の成績を得た. i)避妊率100%. ii)自覚的副作用としては悪心がもっとも多く, 胃部不快感, 腰痛, 下腹部痛, 乳房症状等がこれに次ぐ. 此等副作用は投与初期に多く5周期以後は急減する. 破錠出血無月経では特記すべき事はなかったが経血量の減少は著明で全例に見られ, 対照周期の2/3〜1/2に減じた. iv)BBTに見られる投与中止第1周期の卵胞期の延長, 子宮内膜所見, 尿中Pregnandiol測定成績から性機能の抑制が推定されたが投与中止後のBBT, 子宮内膜像の正常化より排卵現象の早期且つ完全な復元が窺われた. v)肝機能, 血液凝固能の諸検査では特記すべきものはなかった.
- 1965-09-01