黄体機能並びに胎盤機能に及ぼす合成Gestagenの作用
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概要
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Pincus, Garcia, Rock等は19-norsteroidが強い排卵抑制作用を有することを明らかにした. その作用機序として19-norsteroidが下垂体前葉Gonadotrophinの分泌抑制を来たすという報告がある. しかし現在迄ヒトの黄体生命並びに機能に対し, これを延長せしめる成績(例えばChorionic GonadotrophinまたはEstrogenによる)は報告されているが逆にこれを抑制又は短縮するという成績は皆無に等しい. この点, 著者は合成Gestagenにより間脳下垂体がGonadotrophinの分泌抑制を受けるならば, これらGonadotrophinにより支持されていると考えられる黄体形成ならびに黄体機能にも又影響あるものと考え, 合成Gestagenの黄体機能に及ぼす作用を観察し次の如き知見を得た. 正常月経周期の婦人の排卵直後に19-norsteroidを投与し19-norsteroidが黄体発育ならびに黄体機能を抑制するか否かを知る示標として, 第1に尿中Pregnanediolの排泄態度を, 第2にBBT曲線及び次回出血の出現を観察し黄体生命を追及した. Pregnanediol測定法はGuterman, Watteville及びStimmel法の前山変法を使用した, 即ち塩酸加水分解によりPregnanediolを遊離しtoluenにて抽出, クロマトグラフィーにて純化し硫酸呈色反応により定量しAllenの補正式にて算定した. 全実験例25例中14例(56%)に月経周期の短縮を認めた. 8例(32%)は周期の変動を認めず, 2例(8%)は特殊な経過を示し夫々19-norsteroidに対する態度の異なることを認めた. 即ち, (1)排卵後早期(1〜2日以内)に19-norsteroidを投与した場合, その黄体期は短縮され, 且つその黄体期における尿中Pregnanediol排泄量は明らかな減少を示した. (2)排卵後3〜5日より19-norsteroidを投与した場合には黄体期は不変であり尿中Pregnanediol排泄量も対照周期に比し差異を認めなかった. 以上の実験成績は排卵と投与合成Gestagenの血中濃度上昇時期との時間的関係が重視され, 排卵直後に投与せる19-norsteroidは下垂体性Gonadotrophin(主としてLH)の分泌を抑制するものと推測した. しかし黄体が形成過程を終った後はAutonomyを有し投与19-norsteroidにより直接的にも間接的にも影響されないものと思われる. 次に近時切迫流産に対する予防と治療の目的で19-norsteroidが強力なGestagen作用を有することより広く臨床的に用いられているが本薬剤が胎盤機能に如何なる影響を及ぼすかは治療方針に極めて重大なる問題である. 著者はこれを胎盤のProgesterone産生能より追及した. 正常妊娠又は切迫流産時に19-norsteroidを投与せる楊合, 正常妊婦11例につき妊娠9週ないし26週において尿中Pregnanediol排泄量は投与前に比し投与中, 投与後妊娠にともなう漸増を示した. 又2例は切迫流産患者に19-norsteroid連続投与を行い尿中Pregnanediol Patternに変化を認めず, Progesterone産生に関する胎盤機能に影響を及ぼさなかった. 以上の成績は絨毛性Gonadotrophin分泌能は19-norsteroidにより抑制を受けないものと推定した.
- 1965-07-01
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