子宮筋のAcetylcholine様物質量に関する実験的研究
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概要
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子宮筋機能のうち, その収縮と言うことは特に重要なものである. 一般に筋肉の収縮に際して, Acetylcholine(Achと略す)は重要な役割を演じているけれども, 子宮筋と言う特に性ステロイドおよびoxytocinに感受性の強い平滑筋においてAchの役割はどのようなものであろうか, 著者はこれを知るために子宮筋層内Ach様物質量を妊娠を中心に検討したので, こゝに報告する. Ach様物質抽出方法は主としてFeldberg法, 桑島法, 定量は蛙肺法を改良して用いた. 実験成績は次のようである. 妊娠ラットの子宮筋Ach様物質量は妊娠初期に軽度減少するようであるが, その後, 頚部, 体部とも漸次増加する(体部胎盤付着部の遊離Ach様物質量は変動が少ない). 分娩直前にいたり非常に高い値を示すが, 分娩開始とともに総遊離とも軽度減少し, 分娩終了により再び増加する. そして産褥になると急減する. 次に妊娠末期ラットにEstradiolを体重200gにつき0.1mg3日間連続投与し, 最終投与後5〜6時間にて定量した所, 体部ACh様物質の強い増加を認めた. Estrone 1.0mg投与群でも同様増加を認めた. Estradiol 1.0mg投与群では逆に減少しており, Estriol 1.0mg投与群でも遊離Ach様物質量の減少を認めた. Progesterone投与群では0.1mg投与で体部胎盤付着部の遊離Ach様物質量の抑制を認め, 1.0mg投与では非付着部においても遊離Ach様物質量の抑制を認めた. その他合成Progestinの差異についても検討した. Androgen投与群では著変がなかった. 又, 妊娠末期ラットに体重200gにつき Oxytocin 0.01 I.U. を背部皮下投与して, 2分, 5分, 15分後に定量した所, 体部Ach様物質量は2分後は著明な変化なく, その後時間経過とともに減少を示した. その他, 人妊娠子宮筋層内Ach様物質量について検討した. 以上の結果より考按するに子宮筋内Ach様物質は主としてEstrogenにより影響され, Progesteroneも多少加味しているものと考えられる. また, 上記実験により子宮活動が盛んであろうと思われる時はAch様物質量が減少していることが多いので, 子宮収縮時Achが何らかの役割をはたしたために減少していると思われ, また, Oxytocin, Ach, および子宮収縮の3者間にごく密接な関係があるものと推定出来る.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-07-01