婦人科領域の悪性腫瘍患者におけるAldolase活性
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概要
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婦人科領域に於ける悪性腫瘍の代謝像を酵素学的見地より解明すべく, その一端として, 解糖系のfruetose-1・6-diphosphateを二個の三炭糖燐酸に分解する酵素Aldolaseにつき検討した. 子宮頚癌, 絨毛上皮腫, クルーケンベルグ腫瘍等の悪性腫瘍患者及び担癌ラット血清をBruns法にて測定し, その大部分に活性増加を認めた. 健常人を含む非癌患者48例の血清Aldolase活性の平均値は7.1単位で48例中39例, 81%が10単位以下であった. 子宮頚癌患者86例中80例は10単位以上の異常値であったが, 進行期, 閉経前後, 組織分類による差異は認められなかった. 手術療法を行った患者の血清Aldolase値は, 10日後には, 30例中19例63%が, 正常範囲内に低下した. ^<60>Co 照射療法では, 2ヵ月後の照射終了時には, 大部分が正常値に近づいた. 吉田肉腫ラットの血清Aldolase値は移植第4日目より活性増加が始まり, 移植第9日目で約10倍に上昇した. 又肝Aldolase活性は移植第4日目までは変化がなく, その後漸次低下傾向を示し, 移植第9日目では, 13%の低下を示した. 次に癌患者の癌組織及び非癌部筋層と非癌患者の腟部上皮組織及び子宮筋層を比較し, 癌組織は4倍, 筋層部分も30%の活性上昇を示した. 血清Aldolase活性増加の大部分は, 癌組織よりのAldolaseの逸脱によることが推察されたが, Aldolase活性変動の原因として, 癌細胞からの遊出を考える場合, その酵素の局在場所並びに正常細胞と癌細胞との細胞膜透過性などが, 問題となる. そのため, Aldolase活性の細胞内分布と組織培養による酵素遊出機構に対する実験を行った. Aldolase活性の細胞内分布については, Schneider法による分画によったが, 非癌組織及び子宮癌組織の細胞内Aldolase活性は, soluble fractionに於いて, 約60%と最も高値を示した. 子宮癌組織のsoluble fractionに最も活性が高いと云うことは, Aldolaseは細胞顆粒中に局在するのではなく, 可溶分画より細胞膜を通して, 流出し易い酵素であると考えられる. 次に腫瘍組織からの遊出が, 癌細胞自体かその他の基質からか, 判別するためには, 組織培養法の応用が一手段であると考えて, 次の実験を行った. 癌細胞として, Hela cell, 正常細胞としてAmnion cellを使用し, 培養液中への流出の差異を検討した. Amnion cellでは, 培養前の酵素活性を100とすると, 培養後の活性は133, Hela cellでは, 培養後の活性は350であった. Aldolaseの様な上清中に存在する酵素については, Hela細胞の培養液中の方が, 活性が高いことは, Hela細胞の細胞膜の透過性が, Amnion cellのそれより大であることを意味し, 血清酵素の癌患者における上昇の機序の一部を担うと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-06-01
著者
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