子宮頸腟部正常・変化上皮及び癌の組織化学的phosphatase研究
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概要
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Phosphataseは衆知の如く, 脂肪族, 芳香族の燐酸エステルを加水分解し, 燐酸を遊離せしめる一種のエステラーゼである. Phosphataseは生体内及び細胞内に於て広く鉱物質, 含水炭素, 細胞, 核酸等の物質代謝に直接或は間接に関係する生体必須の酵素である. 酸性並びにアルカリ性Phosphatase(ACPase, ALPase)の研究に当り, 基礎実験を行い染色法を定め, 当科外来, 手術患者からの摘出, 切除標本615例を実験材料とし本研究を行った. 1)cryostat切片冷純アセトン固定法を用いた. 2)ACPase, ALPase染色は共にアゾ色素結合法を用いた. 3)基質は10種使用したが, 正常上皮のACPase活性の所見から基質を4型に分類し, 御園生・村瀬分類と名付けた. DI型基質は正常上皮の未熟な細胞程活性の強く現われる基質でNaphthol As An phosphate(NAsAnpと略す), NAsBlp, NAsCLP, NAsEP, NAsMxP及びNAsTrpがこれに属する. DII型基質は中間層細胞に最も活性が強いものでNaαnp, Na6b2npが属す. DIII型基質は分化した細胞程活性が強いものでCaαnpが属す. F型基質は分化度に無関係で活性は一様, NAsGrpが属す, 4)癌以外ではACPase活性が基質分類に殆んど矛盾しない. 5)頚部腺癌のACPase活性は著しく低下する. 6)御園生の所謂「酵素活性遊走細胞」にはACPase活性が強い. 7)毛細血管はALPase活性強く, 毛細血管の上皮層内潜入度は異常, 不穏上皮が最も大であった. 異型上皮, 上皮内癌及び癌では上皮細胞の増殖に毛細血管の増生が間に合わぬ事が分った.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-04-01