子宮頸腟部正常扁平上皮, 各種変化上皮並びに癌に於けるエステラーゼについて
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概要
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私は, 人子宮頚腟部正常上皮, 各変化上皮並びに頚腟部癌でのEsterase活性の変動を検討した. 標本材料は, 外来試験切除及び手術摘出標本を用い, Cryostatにより新鮮凍結切片を作製した. 染色法は, 基質としてβ-Naphthylacetateを用いるNachlas, Seligman法, 5-Bromindoxylacetateを用いるHoet, Withers法の各変法を併用した. 子宮頚腟部正常扁平上皮のEsterase活性は, 基底層細胞に最も強く, 傍基底層, 中間層, 表層細胞となるに従って減弱する. Esteraseの細胞内分布は, 核は陰性であり細胞質にのみ存し, 特に細胞膜に近い細胞質に多量に存在する場合が多い. 各変化上皮は, 正常上皮に比して, その変化が強まるのに比例してEsterase活性が増強する. 上皮内癌は, 中等度より強度の活性を示し, 大部分の扁平上皮癌よりも強い活性を示す. 扁平上皮癌実質のEsterase活性は, 成熟型癌は弱陽性を示し, 未熟型となるに従って強い活性を示す. 正常結合組織並びに癌基質は何れも陰性であるが, 酵素活性遊走細胞のみ陽性を示す. 此のEsterase陽性遊走細胞は, 正常結合織においては, 小型でEsterase微弱陽性であるが, 癌においては, 多様な型式で出現し, 増大, 増量並びに強活性を示す. 前述の癌実質のEsterase活性並びに酵素活性遊走細胞の所見は, 癌の悪性度と密接な関連を有している.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-04-01