子宮頸腟部上皮に於けるグリコーゲンの組織化学的研究
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概要
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新鮮子宮腟部上皮組織の正常, 変化上皮, 癌457例につき, カルノア固定, 唾液消化試験併用PAS染色法を用いてグリコーゲンの局在性を検索し, 子宮頚癌早期診断の補助法として有用か否かを追求した. これと同時に擦過スミア細胞中のグリコーゲンを検索した. 又, 上記と平行して電子顕微鏡的検索及びシラー診を行った. その結果, 正常上皮, 異常上皮, 不穏上皮, 異型上皮, 上皮内癌と上皮の変化が強くなるに従ってグリコーゲンの出現は少くなる傾向を示し, 分布も不規則となる. 又, グリコーゲンの出現は細胞分化の進むに従って増える. 上皮内癌に於てはグリコーゲンの出現は殆んどないか極度に少い. 故に, 組織中のグリコーゲンの有無を検することは変化上皮と上皮内癌との鑑別の助けとなる. 癌組織に於てグリコーゲンを認めない場合が屡々ある(23.6%)が, 癌の成熟度が進むとグリコーゲンを認める場合がある. 従来, 正常上皮中間層細胞より表層細胞の方がグリコーゲンをより多く含むと言われてきたが, 電子顕微鏡的検索を併せ用いた組織化学的研究では両層細胞間のグリコーゲン含量はあまり差がないと思われる. シラー診にて濃褐色を呈した場合は悪性変化を否定できる. 又, スミア細胞においてグリコーゲンの呈色反応明瞭のものは殆んど非悪性である.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-04-01