子宮筋の水および電解質に関する研究
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概要
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水, 電解質とくにNa, K, Ca, およびMg等は, 生体の生命維持に重要であるばかりでなく, 神経の興奮, 筋肉の収縮にも重要であり, ホルモンとの関連性も深いことが知られて測定法の進歩とともに水, 電解質の研究は注目されて来ている. 著者は, 子宮筋機能に関する研究の一環として, 性周期, 妊娠, 分娩, 産褥, 性ホルモン投与, ならびに数種薬剤投与による, 血清および子宮筋の水, 電解質の変動を測定し, 特に最近, 子宮筋の胎盤付着部と非付着部の膜電位差の存在が報告されている点よりして, この両部の水, 電解質の変動もあわせて検討した. 実験材料および方法は, wister系ラットを使用し, 血清および子宮筋組織の水, 電解質を〔Ca〕, 〔Ca^<++>〕, 〔Mg〕および〔Mg^<++>〕は柳沢氏変法を用い, 〔Na〕, 〔K〕は湿式灰化法によりflamephotometerを使用した. 結論(1)妊娠経過, 分娩および産褥については, 血清では〔Na〕, 〔Ca〕および〔Ca^<++>〕は妊娠経過と共に減少し, 〔Mg〕および〔Mg^<++>〕は増加を認める. 子宮筋組織では, 〔K〕, 〔Na〕, 〔H_2O〕, 〔Ca〕および〔Ca^<++>〕は共に増加し, 〔Mg〕, 〔Mg^<++>〕は増加後減少する. 産褥期5日以後には血清, 子宮筋組織共に非妊時に復す. (2)妊娠経過における子宮筋の胎盤付着部と非付着部との関係については, 妊娠初期には, 子宮筋組織の〔H_2O〕, 〔Na〕, 〔Ca〕および〔Ca^<++>〕は非付着部が付着部より大であり, 〔K〕, 〔Mg〕および〔Mg^<++>〕は逆に付着部が大であるが, 妊娠の進行と共にその差が減少して行き, 分娩期には, いずれもその差が消失する. (3)各種ホルモン投与実験については, 血清では, Progestins(Progesterone, 6α-methyl-17α-acetoxy progesterone, 17α-ethinyl-19-nortesterone, Allylestrenol)投与により〔Na〕, 〔Ca〕および〔Ca^<++>〕は増加を認めるが, Estrogens(Estradiol, Estriol, Estrone)投与によっては著変は認めない. 子宮筋組織ではEstrogens投与により, 〔H_2O〕, 〔Na〕, 〔Ca〕および〔Ca^<++>〕は増加し, 〔K〕, 〔Mg〕および〔Mg^<++>〕は減少の傾向を示し, Progestins投与によってはそれとほゞ逆の傾向を認めた. 胎盤付着部と非付着部において水, 電解質量の差は認めたが, 著しい傾向は認めなかった. (4)各種薬剤Oxytocin, Acetylcholine, Methylergometrine tartrate, Sparteinum sulfuricum投与実験について, 子宮筋組織の水, 電解質に著変を認め, 胎盤付着部と非付着部の水, 電解質の差が減少または消失した.
- 1965-03-01