骨盤内静脈撮影法(経腟子宮筋層内注入法)による子宮筋腫静脈のレ線学的研究
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概要
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生理的変動に伴い, 必然的に起る女性***の脈管系の変動, 或いは各種婦人科的疾患に伴う脈管系の変化についての研究は従来より病理組織学的研究或いは血管鋳型の作製或いは又, 剔出子宮への造影剤注入によるレ線撮影等によって多数行われている所であるが, それらの研究方法はいわばin vitroの研究とも云うべきものであり, それらの結果が果たして生体内の真の姿をとらえているとは云えないと思われる. 著者は先にTopolanski-Sierraの方法に従って経腟的に子宮底部筋層に造影剤を注入した実験を発表したが, 今回同様の方法によって, 正常子宮8例, 慢性濔慢性子宮肥大症8例, 粘膜下子宮筋腫6例, 漿膜下子宮筋腫3例, 筋層内子宮筋腫20例, 多発性子宮筋腫8例, 計53例の子宮に骨盤内静脈撮影法を行い, 子宮筋腫患者の子宮を中心とした骨盤内静脈の変化を生体に於て観察したので報告する. 実験器具は著者の改良したものを用い, 造影剤は70%Diaginolを使用し, これを20CC注入後2枚のフイルムに撮影し, 剔出子宮, 開腹所見, 子宮卵管造影像を参考として次の諸点即ち, 子宮筋層内の静脈像, 附属器及び子宮傍組織の静脈像, 内, 外腸骨静脈像, 総腸骨静脈像, 卵巣静脈像, 及び静脈吻合等について観察を行い次の結果を得た. 1) 筋腫子宮の静脈像は正常子宮に比して明らかに拡張を示し密に分布し特に, 粘膜下子宮筋腫, 慢性濔漫性子宮肥大症に於て著明であった. 2) 漿膜下子宮筋腫, 粘膜下子宮筋腫では筋腫結節の存在側が非存在側に比してわずかに静脈拡張像, 静脈恕張像がみられるがあまり著明な差異は無かった. 3) 筋層内子宮筋腫では筋腫結節の大きさによって筋層内静脈像が異なる. 即ち筋腫結節が鵞卵大以上のものでは筋層内静脈は筋腫結節存在側では現われず, むしろ対側の筋層内静脈及び子宮傍組織の静脈像が良く抽出されていた. これに反し, 筋腫結節が小さいものでは筋腫結節存在側の筋層内静脈及び子宮傍組織の静脈が著明に造影されていた. 4) 子宮傍組織の静脈像は全例に現われているが, 内, 総腸骨静脈に流入する像はあまり著明でなく, 卵巣静脈に入る像が大部分であった. 5) 卵巣静脈像は大多数の症例で現われているが, 筋腫内子宮筋腫では殆んどの症例に於て左側に比して右側卵巣静脈像が著明に現われていた. 6) 子宮周期と静脈像との間には特に著しい関係は無かった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-02-01