子宮電図に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
細胞外電極法にて子宮平滑筋の活動電位変化を追求することによりどの程度子宮筋の病態生理学的諸性状を分析的に表現し得るかを知るため, 諸種hormone投与時及び妊娠分娩各期のラット子宮筋の活動電位変化とその収縮曲線とを同時記録しその波形, 放電振巾, interval diagram, burst間interval. 放電数, 伝播速度, 伝播範囲等の点から分析判定した. 自発活動電位観察の傍ら全例にatoninを投与しその影響を観察した. 1) 波形はED型, P型, ET型波形の3種に分類出来ることが判った. ET型波形は分娩時の波形と極めて近似のものであった. 2) 平均振巾はED, ET投与時, 及び分娩時に大で1.0〜2.5mV, P投与時, 妊娠時に小で0.05〜0.5mVであった. 3) interval diagramは400〜3000m secの範囲にあるが, ED適量投与時では約700m sec ET大量投与時, 分娩時には1200〜2000m sec, と延長した. 4) burst間intervalは40〜100secを示しhormoneの差異によりあまり有意の差を認めなかった. 5) 放電数はED, P適量投与群では25〜30個と多いが, ET大・量投与時, 分娩時には特異的に減少して10個前後となった. 6) 伝播速度はED群で約6.2〜10.80cm/sec, ET群で9.8〜13.6cm/sec, 分娩直後で約12.6〜15.8cm/secであった. 7) 伝播範囲はED群では1.5cm以下, P群では0.5cm以下, ET群では時として1.5cm以上伝播するが, 分娩時には更に良好であった. 以上の様な各項目についての新しい分析を行えば子宮筋の作用態度を判定出来, ひいては未知の子宮材料のhormone環境を推定することが可能である. 又分娩時極めて多量に排泄されるETの子宮体筋に対する生理学的作用は全く不明であったが, 子宮体筋に対してはもちろん, 分娩発来機序の観点からも極めて重要な役割を果していることを明らかにした.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-02-01