妊娠時における浮腫の臨床化学的研究
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概要
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妊娠中の浮腫の原因は多々あるが, 最も多いのは晩期妊娠中毒症の場合の浮腫である. これは本症の3症状のうち最も早く出現し, 出産後は最も早く消失する. この妊娠中毒症の際の浮腫の成因については多くの研究があるが, 私はこれを次のような諸点から検討し各種の知見を得たので, その大様を発表したいと思う. すなわち 1) 浮腫計による浮腫消長の客観的把握. 2) 浮腫の程度による各体液量の変動. 3) 血清電解質の変動. 4) 電解質クリアランスによる電解質代謝. 5) 浮腫液の組成. 6) Ht値の変動. 7) 血清滲透圧の変動. 8) Edemogramによる水代謝異常の予見等について検討した. 浮腫計による計測によれば下肢容積の増大が200ml以上となった時は測定間隔の長短にかゝわらず中毒症の前ぶれとして注意又は治療を要する. 血液水分量は浮腫(-)のもの81.1%より(〓)のもの83.2%と浮腫増大と共に増加し, 産褥24時間目の値では一時的に更に増加した. 循環血漿量は浮腫あるものはないものより稍々減少したが, 産褥24時間目においては, 両者共に分娩前の値より増加した. 全体液量は浮腫の強いもの程増加し, 産褥24時間目の値はいずれも分娩前の値より減少した. 組織間液量も全体液量と全く同一の傾向を示した. 血清電解質は浮腫の程度による差がなかった. 電解質クリアランスはGFR-Na, Cl, Kは浮腫(〓)のものは(-)のものよりいずれも低下した. TRR-Na, Cl, KではK以外はいずれも浮腫の強い程増加したが, Kはむしろ減少した. 産褥24時間目ではGFR-Na, Cl, Kは増加し, TRR-Na, Clは分娩前の値より減少したが, Kは不変であった. 浮腫液と血清の組成を比較したところ, 陽イオンとしてのNaは血清中より浮腫液中にに多く, Kは血清中に多いが, Clは浮腫液中に著明に多かった. Ht値は浮腫の程度による差は殆んどなかったが, 産褥24時間目にはいずれも分娩前の値より減少する傾向を示した. 血清滲透圧は浮腫の程度に関係なく正常範囲内にあったが, 産褥24時間目にはいずれも分娩前の値より減少した. 浮腫計による下肢容積の値, 各体液量の正常値を0として, これを1直線上におき水分過度蓄積の状態をこの線より右側に来るように各単位を任意にとって1つの表を作り, これをEdemogramと称し浮腫予見の手段とした.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-12-01
著者
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