児頭骨盤不均衡に関するレ線産科学的研究 : 主として長骨盤を中心として
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概要
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著者は児頭骨盤不均衡に関する研究において, 特にその発生機序に重点を置いて追求した. 分娩2,068例の中, 児頭下降が障害され, C.P.D. の疑われた症例144例があったが, これらの分娩経過中に, 適宜レ線臓影を施行し, 他種産科診断法を併用のもとに, その原因となる各種因子の抽出, 解明を試みた. C.P.D. の疑われた144例中, 6仙椎を有する所謂長骨盤を67例(47.5%)に発見し得たので, 特に長骨盤に於けるC.P.D. 発生機序について重点的に攻究した. 著者は本骨盤を3型に分類した. 即ち, I型は移行型を主とし, II型は正常仙骨弧を有する6仙椎, III型は, 扁平6仙椎, 即ちKanal Beckenと呼ばれるものを含み, その各型に於ける分娩形態を追求すると, その各々の異常分娩発生頻度には, I型54%, II型63%, III型89.5%と型別による差異を生じ, 児頭固定の難易, 児頭胎向廻旋異常の発生頻度にも, 各型別による特異性を看取し得た. 更に後方仙骨の実態のみならず, 児頭の進入固定を規制し得ると考えられる骨盤開角及び骨盤傾斜角, 及びこれら各種因子の関連性を考慮した骨盤側因子を抽出した. 即ち開角80°以下, 傾斜角60°以上の分割内では, 有意に異常分娩の増加が見られ, 更に同様分割内では, 長骨盤III型に於て, 待に帝切頻度の有意増加が注目された. よって, C.P.D. 発生因子としての骨盤側因子に左右されると考えられる児頭進入過程の追求を次いで行った. 即ち, 児頭の下降先進が障害された症例のレ線像によって, 先進部を頂点とする児頭長軸, 載域, 児体脊柱を結ぶ線を描記し, これを児体進入曲線と呼称し, この曲線の弯曲度と, 前記骨盤各型との関連性を見るに, 曲線の弯曲の鋭角的なものをA型, ゆるやかなものをC型, 中間型をB型と規定すると, I型A・B型, II型A型, III型A・B型では帝切率が高度となり, 特にIII型A・B型では, 75%に帝切率が見られ, これら一連の関係は, 後述する如く, 容易に力学的に説明し得るのである. 更に本criteria内に於けるA型中, 帝切例に於て, 真結合線の最大限界は12cm, 88.9%が11.0cm以上であった事と, criteria外の帝切施行例では, 真結合線10.5cm以内の狭窄度を証明し得た事実は, 従来の径線の短縮のみによる比較判定の検討に対して, 動的過程に於ける C.P.D. 発生要因と, その時点に於ける診断の必要性を如実に物語るものと云えよう.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-11-01
著者
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