妊婦喫煙による胎児発育障害の作用機序に関する研究
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概要
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妊婦の常習的喫煙により, 児の生下時体重が減少し, 未熟児出生率が増加するとの報告が最近かなり出ており, この原因としてはNicotin, 一酸化炭素(CO)等が挙げられているが, その作用機序に関しては, 未だ殆んど不明である. 私は喫煙による胎児発育障害の作用機序に関する研究の一環として, 常習喫煙妊婦52名, 非喫煙妊婦68名について, 血中一酸化炭素ヘモグロビン濃度(HbCO)及び胎盤の組織呼吸を追求し, 以下の結果を得た. 1) 血中HbCO濃度は, 各妊娠月数に於て, 常に喫煙群が高い. 2) 妊娠月数による血中HbCO濃度の変動は, 非喫煙群では特に一定の傾向及び有意差を認めず, 喫煙群では, 妊娠末期に上昇の傾向を認める. 3) 分娩時母体血, 臍帯血中のHbCO濃度は, 喫煙群が高値を示し, 且つ喫煙量の多い群がより高値である. 4) 母体血中と臍帯血中のHbCO濃度は, ほゞ比例したが, 稍々母体血中の濃度の方が高い. 5) 喫煙後の血中HbCO濃度の時間的減少の速度は, 喫煙妊婦<喫煙非妊婦<非喫煙妊婦<非喫煙非妊婦の順で, 喫煙者は非喫煙者よりも, 妊婦は非妊婦よりも, HbCO解離速度が遅延している. 6) 妊娠月数別に絨毛及び胎盤の組織呼吸を比較した処, 喫煙群は非喫煙群よりも低値で, 且つ, 喫煙量の多い群は一層低値を示し, 喫煙による胎盤機能の低下を認める. 7) 母体血中のHbCO濃度と胎盤組織呼吸とは, 逆相関々係を示す. 以上の結果から, 喫煙による胎児発育障害の機序として, 直接の原因の一つに胎盤の機能障害があり, 血中HbCOがこれに関与すると考えられる.
- 1965-10-01
著者
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