腟式手術侵襲時に於ける尿中中性17-ケトステロイドの動態に関する研究
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概要
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外科, 産婦人科領域に於ける手術侵襲に関する研究は, 従来腹式開腹手術に就いてのみ行なわれて来た. 近年腟式手術が漸く広く行なわれようとしているが, 腟式手術の生体侵襲に関する研究は大きな意義を持つと云える. 著者は腟式手術侵襲に関する綜合的研究の一端として, 腟式手術(腟式子宮全摘除術)の副腎皮質機能に及ぼす影響をChemocorticoid測定の面から探究した. 即ち尿中中性17-Ketosteroid(総量, 分画)を主として観察し, 併せて尿中17-hydroxy corticosteroid, 末梢血好酸球数の消長を観察して綜合的に副腎皮質機能をうかがった. 又同時に腹式手術(腹式子宮全摘除術)に就いても同様な観察を行ない, 比較検討の資料とした. 腟式手術群に於いては術前にEmotional Stressに対する反応が見られ, 11-oxy-17-KSの排泄増加を見, 術後1日では17-KS総量及び分画に変動が見られ, 術後2日目でこれらの排泄増加は最も著明であった. 分画の増加は主として11-oxy-17-KSに見られた. 術後3日目では11-oxy-17-KSはやゝ減少し, それに反して11-desoxy-17-KSが増加した. 術後4日以後は漸次術前値に復するが, 9日目に再び総量の増加の傾向を見た. 腹式群に於ても, 腟式群に見られた如き定型的な経過をたどって消長したが, 17-KS排泄増加は腟式群よりも著るしく高く, 且持続期間も長かった. 尿中17-OHCSの術後の変動は17-KSの11-oxy-17-KS分画の変動と並行して増加を示した. 又腹式群に於いて著明に腟式群より増加した. 末梢血中好酸球数の変化は, 腟式群では手術直後に, 腹式群では更に24時間後に最も減少した. このような両群間に見られる相違は手術野の大小, 腹壁切開, 腸管操作等の有無により生ずると思われるが, 更にこれらの両群よりも侵襲の大きい事が予想される腟式広汎性子宮全摘除術兼腹膜外淋巴節廓清術患者について17-KSの総量及び分画な見ると, 予期の如く術後大きな変動を示した. 以上の事実より著者は腟式手術時の副腎皮質機能の動態を知ると共に, 腟式手術は腹式手術に比して軽微な侵襲しか生体に与えない事を確め得た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-01-01
著者
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