人胎盤の糖質代謝とそれに対する性ホルモン添加の影響に関する研究
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概要
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胎盤の糖質代謝の多岐に亙る様相を細胞レベルで解明するため, 放射性炭素で標識されたブドウ糖, glucose-U-C^<14>, glucose-1-C^<14>及びglucose-6-C^<14>を基質とし, 絨毛組織, 中期胎盤, 娩出胎盤及び晩期妊娠中毒症胎盤における酸素消費能, 乳酸生成能, 炭酸生成能, glycogen生成能及び脂質生成能を同時に観察した. 又, 胎盤はsteroid hormoneのtarget organであるので, estradiol, progesterone及びtestosteroneを絨毛組織, 娩出胎盤に添加した場合のこれらの代謝様相に対する影響を考察してみた. 1. 酸素消費能及び乳酸生成能は絨毛組織においては高く, 妊娠月数が進むにつれて減少する. 晩期妊娠中毒症胎盤は正常娩出胎盤の約1割方低い値を示す. 2. G-1-C^<14>からのC^<14>O_2生成能に対するG-6-C^<14>からのC^<14>O_2生成能の比は3.2前後である. 即ち胎盤組織においてもWarburg-Dickens回路の存在することが分る. 3. glycogen及び脂質の生合成能は絨毛組織及び中期胎盤組織において比較的高く, 娩出胎盤及び中毒症胎盤においては活性度は低下してくる. また絨毛組織, 中期胎盤組織においてはglyconeogenesisが観察された. 4. progesteroneはEmbden-Meyerhofの回路を経て代謝される過程に促進的に働くが, estradiol, testosteroneはWarburg-Dickens回路ならびにEmbden-Meyerhof回路を経て代謝される過程に促進的に働く. 5. estradiol, progesterone, testosteroneは酸化過程の結果生じたCO_2が固定されてglycogenを生成する過程に対しても促進的に働く.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-06-01