分娩時麻酔における母児血中ガスの研究
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概要
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分娩時の母体血・胎児血について, 胎盤における血中ガス出納を中心に検討を加え, とくに麻酔分娩による血中ガスの麻酔拮抗剤及び, 少量, 大量の酸素投与による変化を追求し, 以下の成績を得て, 新生児恨死対策に供せんとした. (1) 酸素含量 : 母体血, 胎児血ともに, 麻酔分娩にて低下をみたが, 麻酔拮抗剤投与, 少量の酸素投与にて, 増加の途をたどり, 大量の酸素投与にて最高値を示した. (2) 酸素分圧・酸素飽和度 : 麻酔分娩にて低下し, 拮抗剤投与, 少量の酸素投与では変化せず, 大量の酸素投与にて大幅に増加し, 酸素授受に関する環境を最良のものとした. (3) PH : 全般にacidosisの傾向にあった. 麻酔分娩にて低下, 拮抗剤投与では変化をみなかったが, 酸素投与では少量, 大量ともPHは増加し, ひいては, 酸素, 炭酸ガス出納から, 酸・塩基平衡まで好結果をもたらした. (4) 炭酸ガス含量 : 麻酔分娩にても, 正常分娩とあまり変らず, 拮抗剤, 少量の酸素投与は, ともに変化をもたらさなかったが, 大量の酸素投与にて減少し, その排泄の好転せることを示した. (5) 炭酸ガス分圧 : 麻酔分娩にて増加, 拮抗剤, 少量の酸素投与で変化をみなかったが, 大量の酸素投与で減少し, 炭酸ガス排泄, ひいては, 酸素の出納に好影響をもたらし, 酸・塩基平衡状態も良い状態に導びいた. (6) 酸・塩基平衡 : 分娩時には軽度の混合性のacidosisの状態にあるが, 麻酔分娩では, その上に呼吸性acidosisが強く加わっている. 拮抗剤投与では変化をみないが, 酸素投与にて, 呼吸性acidosisは好転し, 又, 代謝性のacidosisも消失した. (7) 児の状態 : 酸素投与がApgar's Scoreにて, 最良であった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-05-01