子宮筋に於ける高エネルギー燐酸化合物の研究
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概要
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クレアチン燐酸及びアデノシン3燐酸などの所謂高エネルギー燐酸の生体内代謝における重要性は, 特に筋肉では収縮と関係して, 一般に認められているところである. 一方, 子宮はその生理的乃至性ホルモン投与の状態により著しく形態や機能を変える. この変化と子宮筋の高エネルギー燐酸とはいかなる関係にあるか, この問題が取り上げられたのは近年になってからであり, しかも現在迄の報告は断片的で, 且つ成績も一致しない. 成績の不一致は燐酸分画の抽出法と定量法に問題があったためと考えられる. 著者はこの点に留意すると共に, 出来得る限り多様な条件下での高エネルギー燐酸量の変化を追求した. 燐酸分画定量法としては高橋法を用い, クレアチン燐酸及び7 minutes hydrolysable-Pを測定した. 実験動物としてはラットを使用, 更にヒトからも試料を得て実験を行った. その結果, 生理的変化では, 未熟<成熟卵妊<妊娠末期となり, これは子宮筋の活動性と一致して合瑠的である. 又, 非妊時の発情期 (排卵期) に著明な増加をみること, 子宮体部の上部と下部の比較では下部<上部であるとこなども子宮筋の機能状態と関連ずけて考え得る. 各種性ホルモンを去勢ラットに投与してその影響をみると, Estrogens, Stilbesterolは発情作用の強さの順に高エネルギー燐酸増加作用が強く, ProgestdroneはEstrogensの約2倍強い. Testosteroneと蛋白同化ホルモンでは, 蛋白同化ホルモンに明らかな増加作用が認められて, Testosteroneに認められないことは興味深い. 以上, 高エネルギー燐酸は生理的には子宮の機能的状態に依存して変化することが認められ, 性ホルモン投与による変化からみて, 生理的変動の原因に性ホルモンが関与していることは明らかであり, 更に投与女性ホルモンにかなり鋭敏に反応して高エネルギー燐酸が変化することは, 生物学的検定法への応用性を期待させるものである.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-05-01
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