子宮頚癌に対する化学療法について
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概要
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癌が放射線療法や手術の如き局所療法では及び難いことがあるので, 昭和28年12月より現在迄子宮頚癌に対し手術療法, 放射線療法の補助療法として用い, 昭和38年10月迄に入院した子宮頚癌の一部160例に就いて臨床的観察, 病理組織学的検索, 予後等を追求し制癌剤の効果の有無を験した. 尚臨床的観察, 病理組織学的検索はMitomycin C使用例に就いて, 予後は5年以上経過せるNitromin, Azan, Sarcomycin例に就いて行った. 1) 臨床的観察, Mitomycin Cは全例全身応用 (静注) とし, 薬剤投与後手術又は放射線療法を行なった. 原発巣腫瘍が縮小したものは40例中17例42.5%にみられた. 更に副作用に就き検討すると, 自覚的,他覚的にも他の制癌剤と大小同位で造血器機能は強く障害され, 特に白血球, 栓球数の減少は著るしく, 長期大量投与の困難性を思わしめた. 肝, 腎機能は障害を示さなかった. 2) 病理組織学的研究. 手術群20例, 非手術群18例計38例に就いてMitomycin C投与前後の病理組織学的検索を, 腫瘍密度, 細胞大小不同, 核の膨化, 核小体膨化, 細分散乱, 濃縮, 崩壊, 分剖. 原形質の空胞化及び崩壊. 間質の浮腫状膨化, 細胞浸潤, 線維化に就いて検討したところ癌に対して抑制的に作用すると思われる所見を得た. 3) 予後3年経過せるToyomycin, 5年経過せるNitromin, Azan, Sarcomycinに就いて同年度制癌剤非使用例との予後を比較するに, Toyomycinは対照群に比較して優っている. Nitromin, Azan, Sarcomycinは手術, 放射線治療併用群共全く差を認めていないが, 予後不良と云われているL型に75.0%の5年治癒成績を得たことは意義ある事と思われる. 又骨盤内リンパ節に転移を有する症例での制癌剤の使用も対照群との間に差を認めなかった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-12-01