子宮頸癌の蛋白結合性SH基についての組織化学的研究
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概要
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試験切除および手術摘出標本615例のクリオスタット切片につき, D.D.D.-AZO色素法を主に蛋白結合性SH基を, 頚腟部正常上皮, 変化上皮, 頚癌およびその放射線照射例において, 組織化学的に比較検索し, 更に一部を顕微測光法を応用して, 次の知見を得た. 他の蛋白染色に比して, SH基染色においては, 上皮性組織にかなりのコントラストをもって反応が起り, 未分化細胞に強く, ある程度細胞の増殖・発育傾向と関係があろうと思われた. 変化上皮では, 正常上皮に比し, 未分化細胞層が厚くなるたけ濃染部位が厚くなるが, その濃度にさほどの差異が認められない. 扁平上皮癌においては, 一般に癌巣の辺縁部がその中心より濃染する傾向はあるが, 組織構造異型の強い癌ほどこの関係が少く, 癌巣全般に同程度に染色される. その濃度は, しかし, 個々の癌により, 又同一癌でもその部位により, かなりの差異があり染色性のばらつきが見られる. この事から, 癌細胞の増殖性にかなりの幅があろうことが推測され, 所謂上皮内癌, 癌の癌苔部および籏出部の多くは, 正常上皮基底層より淡染することがなかったのは興味深い所見である. 癌細胞中のSH基は, 放射線にかなり敏感で, 照射により一般に淡染する傾向を見るが, その程度は, 癌および癌の部位により差があり, 未熟癌の方がやゝより影響が強いと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1964-10-01