兎唇手術の問題点(特別講演 (5), 第 10 回日本小児外科学会総会)
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概要
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唇顎口蓋裂の治療のうち, 外科的治療面においては, 先進諸家の非常な努力と研究により, 外鼻, 口唇に対する第一次手術成績は著しく向上したが, 術後経過と共に所謂術後変形のみられる場合は必ずしも稀ではない.これらの変形のうち最も重要なものの1つに上顎の変形と, これにともなっておこる上下顎関係の異常がある.上顎の術後変形の原因として, たとえば先天性の発育障害, 或は手術時期手術方法その範囲等があげられているが, 唇顎口蓋裂の場合には, 顎裂部の処置が特に大きな影響を与える.演者は, 顎裂部閉鎖法としてStellmachの方法による骨移植をおこなったが, その最長8年7ケ月, 最短4ケ年の術後経過を観察すると, 乳歯期にみられたすぐれた点も, 混合歯列さらに永久歯列となるにつれて非移植例との差は次第に減少した.さらに骨移植例には, より好ましくない影響がみられるという成績も報告されている.骨膜弁移植例については, 症例数も少なく, 観察期間も短い為, 術後変形については判断の資料をもたないけれども, この方法がVeauの方法に極めて近似している点から長年月にわたる経過観察を必要とするものと考えている.又軟組織弁のみによる形成法の場合も同じく長期観察が必要であろう.一方顎発育の問題は歯科矯正学の取り扱うところであり, その成績は高く評価され, 欧米において唇顎口蓋裂治療においては, 必ずその専問家の参加を求めているのが常態である.この事から, 唇顎口蓋裂の術後上顎変形の予防並に治療としては, 口唇に対する手術時期は早くとも生後3ケ月以後とし, 手術を慎重且つ愛護的におこなう事が重要であり, 上顎発育と大きな関係をもつと考えられている部位への大きな侵襲をさけ, 歯芽の温存をはかり顎骨骨膜を保護するような方法, たとえば軟組織による2層連結方法を採用すると共に, 術前術後の顎発育を正しい方向に導く為, 歯科矯正学の力を借りる事が是非とも必要であると考えている.最後に, 本講演のため貴重な歯科矯正治療模型を御貸し下さった九州大学歯学部高浜靖英教授に厚く御礼を申し上げます.
- 特定非営利活動法人日本小児外科学会の論文
著者
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