蛋白同化ステロイド投与のアミノ酸Incorporationに及ぼす影響

概要

論文の詳細を見る
各種内分泌臓器の蛋白代謝機構における各種ステロイドの作用機序の一端を解明しようとして, 蛋白同化ステロイドを中心に, ステロイド投与がラットの体重や各臓器の重量に及ぼす影響を観察し, 窒素代謝の消長に関しては, 放射能アミノ酸, ^<14>C-Glycineを用いて, それぞれ比較検討した. 正常雌ラット及び去勢雄ラットを使用し, 4〜5匹を1群として各種ステロイド4-Chlorotestosterone acetate(4-Cl. T.A.), 19-Nortestosterone decanoate(19-N.T.D.), 4-Hydroxymethyltestosterone(H.M.T.), Testosterone propionate(T.P.), Testosterone enanthoate(T.E.), Estradiol benzoate(ED.B.), Estradiol dipropionate(ED.D.P.), 17α-Hydroxyprogesterone capronate(H.P.C.), Cortisone acetate(C.A.), Dexamethasone phosphate(D.P.)を用い, 夫々10日毎に, 又は毎日投与し, 期間は4〜5週の長期投与である. 最後のステロイド投与と同時に, 総合アミノ酸・ブドー糖溶液に2.0μc/mlの割合に溶解したGlycine-2-^<14>Cを体重100g当り2.0μc注射し, 6時間後に屠殺した. 各臓器の湿重量を測定し, その50mgを10%Trichloroacetic acid中でhomogenizeし, 更に同液で3回, 温Ethanolで2回遠心洗滌し, 核酸部分, 脂質及び遊離^<14>C-Glycineを除去後, 蛋白分画を放射能測定試料皿に移して乾燥させ, Gas-Flow-Counterで放射能を測定した. 1) 去勢オスラットの体重の消長は, 対照に比してT.P., 4-Cl. T.A., 19-N.T.D. あるいはH.M.T.などの投与により増加し, ED.B.投与により減少した. 又, 正常メスラットの体重は, 19-N.T.D., T.E. の投与で対照群より増大し, ED.D.P., D.P.投与では殆んど体重に変動がみられなかった. 2) 皮膚・脂肪, 骨・筋, 内臓の3者の湿重量の比は, 各ステロイド投与群の間に差異なく, ほゞ一定で, 体重増加の際は3者がほゞー定の比を保ちつゝ発育した. 骨・筋, 皮膚・脂肪の乾燥重量は, 蛋白同化ステロイド, 男性ホルモンの投与で, 対照群より増大し, Estrogen, Corticosteroid投与群では小であり, 体重の大小とほゞ比例していた. 又, 乾燥重量と湿重量の比は同一投与群内ではほゞ一定であり, 湿重量の増大が, この実験に関する限り過剰の脂肪沈着や浮腫によるものではないと思われる. 大腿骨の乾燥重量と筋乾燥重量とを比較検討したところ, 体重の変動に伴なって増減するのは筋重量であって, 骨重量は比較的変動が少なかった. 3) オスラットの挙肛筋重量と^<14>C摂取率は, 対照に比し, T.P.あるいは4-Cl. T.A. 投与群と非去勢群において増加した. 4) 副腎重量と^<14>C摂取率はメスオス共に, T.P.の投与で対照群に比し低下した. 即ち, Androgenは副腎に抑制的に働いた. 5) 肝は, 蛋白同化ステロイド, 男性ホルモン投与で, その体重に対する重量比が減少し, Estrogen, Corticoidの投与では逆に増大した. しかし蛋白同化ステロイドの投与により, 肝の実重量は増大し^<14>C摂取率も増大した. 6) 卵巣の重量及び^<14>C摂取率は, T.P. あるいは19-N.T.D. 投与により, 対照群よりかなり低値を示した. 子宮重量は, T.E. あるいは 19-N.T.D. の投与では, 殆んど変化をみないが, ED.D.P. 投与で増大し, 去勢対照群では減少した. 7) 胸腺は, 殆んどのステロイド投与群で重量が, 対照群に比べて減少し, その程度はオスラットでは, T.P.>非去勢群> 4-Cl. T.A.>ED.B.>対照群の順に大であり, メスラットでは, T.E.>D.P.>19-N.T.D.=対照群>H.P.C.>去勢群の順に大であり, ^<14>C摂取率はT.E.投与群が最も低値を示した. 即ち, 胸腺抑制効果はAndrogenが最も著明であった.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1963-10-01

蛋白同化ステロイド投与のアミノ酸Incorporationに及ぼす影響

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク