DHA-S負荷試験による胎盤機能判定に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊婦尿中に排泄されるestriol (E_3)量を測定することは,胎児の発育状態と胎盤の機能を窺う重要な検査法とみなされてきた. しかし妊婦尿中のE_3量は個体差,日差が比較的大きく,かつ胎盤の予備力を反映しないことが,胎児胎盤系の機能検査法の最大の難点とされていた. そこで私はE_3の生成過程を利用してdehydroepiandrosterone sulfate (DHA-S)を負荷し,負荷前と負荷後の尿中E_3の増加量から転換率を求めることによつて,胎盤の予備力を把握し,負荷前のE_3値と総合して臨床上,一層効果のある胎盤の機能判定を行うことができるか否かを検討した. 正常妊娠49例,産褥2例,異常妊娠46例を対象にDHA-S負荷試験を行つた.負荷方法については母体静注法,点滴静注法,筋注法,胎児筋注法,羊水内注入法が検討され,結果と実施の簡便さとから,母体筋注法が最も実用的とみなされた.負荷前24時間尿と負荷後24時間尿を採取し,E_3-kit法によりE_3を測定した. (負荷後E_3値-負荷前E_3値)/負荷量×100%を転換率とした. また分娩時における胎児の状態(胎児仮死,低体重,未熟児)と胎盤の肉眼的変化(石灰沈着,白色硬塞,一部早期剥離その他の病的所見)を観察し,臨床的吟味を加え,次の結論を得た. 分娩前,胎児胎盤系機能障害の有無を知ろうとする場合,DHA-S 200mgを母体に筋注し,尿中E_3を測定することによつて,胎盤機能ことにその予備力を早期にしかも簡便に判定し得ることを見い出した.すなわち,妊娠9ヵ月以降は,転換率12.0%以上を胎盤機能正常,6.0%以下を胎盤機能不全,ただし,負荷前のE_3値が高い場合は転換率の如何に拘らず,胎盤機能は正常と判定してよいと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-03-01