先天性胆道閉鎖症に対する肝門部肝空腸吻合術 : その再評価と手術成績向上のための諸考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
先天性胆道閉鎖症の所謂吻合不能例に対して, 最近では, 肝門部腸吻合術が標準的な手術々式と考えられるに至ったが, 現時点での手術成績は, まだまだ満足すべきものではなく, 症例を重ねるたびに, その成績向上のための努力と検討がなされなければならない.本手術を行なうに当って, 問題点は多いが, 本稿でははじめに, 肝門部空腸吻合術において, 充分な胆汁誘導が続いて得られるための考察として1)肝門部操作範囲の問題2)術前術後管理の要点3)逆行性感染防止について述べ, 次いで不幸にして手術施行後も胆汁排泄が不充分な症例には, 時期を失うことなく4)繰返し肝門部より肝両葉に向って掘鑿を行ない, 胆汁誘導に努めるべきことを強調した.しかし, 本手術で誘導される胆管は極めて細いもので, そのための慢性胆汁誘導不全が存在するものと考えられ, これが将来の肝硬変, 門脈圧亢進症の進行に連らなると考えており5)門脈圧亢進症の問題についても考察を試みた.肝門部肝空腸吻合術は, 従来予後絶対不良と考えられた吻合不能例にも, 治癒が期待できるようになり, 高く評価さるべき手術々式であるが, 月令の高い, 肝硬変の進んだ症例では, 手術成績は非常に悪い.本疾患の末期患者に接するたびに痛感することは, 荒廃した肝に対しては, 肝移植以外に救命の道はなく, 今後移植手術が安全に行はれるよう種々な面での一層の努力が必要であり, 肝移植の問題は, 本疾患の治療に取り組む小児外科医の重要な課題の一つであると考えている
- 日本小児外科学会の論文
著者
-
石田 正統
東大第二外科
-
土田 嘉昭
東大第二外科
-
今泉 了彦
東大第二外科・小児外科
-
斉藤 純夫
東大第二外科・小児外科
-
本名 敏郎
東大第二外科・小児外科
-
橋都 浩平
東大第二外科・小児外科
-
岡部 英男
東大第二外科・小児外科
関連論文
- 11.冷凍手術の実験的研究 : 液体窒素噴霧法と接触法の各種臓器に対する影響について(昭和48年度第19回凍結及び乾操研究会発表論文並びに討論要旨)
- 20. 先天性総胆管嚢腫の考察(第 6 回日本小児外科学会近畿地方会)
- 18. 小児肝腫瘍とまぎらわしい肝硬変症の二例(第 6 回日本小児外科学会近畿地方会)
- 13. 先天性腸閉鎖症における術後通過遷延に対する対策(第 6 回日本小児外科学会近畿地方会)
- 先天性胆道閉鎖症に対する肝門部肝空腸吻合術 : その再評価と手術成績向上のための諸考察
- 14. 異所性同種肝移植の実験的研究(膵・胆道・肝, 第 2 回日本小児外科学会)