冷凍手術による子宮腟部ビランの治癒機転に関する生化学的研究
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概要
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子宮腟部ビランの冷凍手術cryosurgery後にみられる多量かつ持続性水様帯下の漏出を生体の防禦反応と解し,帯下中にビランに対する修復物質xの含まれ得ることを推測して,その生化学的分析により性状を明らかにすることによつて治癒機転の考察に新たなアプローチを試みた.その知見は次の如くである. 1. 帯下中電解質量(Na,K,Cl)はKのみが異常に高く,日を経るにつれ更に増量する.血清電解質量はKのみが正常範囲ながら術後5日目に軽度の増量を示し,細胞破壊は一挙に行われるものでなく経日的に進行し術後5日目以降頂点に達することを示した. 2. 蛋白分画は基本的に血清のそれと同様なパターンを呈するが,低蛋白,高albumin,低α_2-globulinにして高A/G比の特性を示し,術後3日目には血清の正常パターンに近ずいて防禦反応の減衰を示唆した.albumin濃度とビランの消失効果との間に関連は認められない. 3. fibrinogenは毛細管定性法によりその存在は認められない. 4. 妊婦子宮腟部ビランの術後にみられる帯下中にHCGの存在を免疫学的妊娠反応により初めて実証した.このHCG量は半定量法でみるに血中及び尿中HCG量より低値を示すものが多く,この知見は子宮腟部組織内に於けるestrogen濃度の推測に有力な示唆を与えた.HCG濃度とビランの消失効果との間に関連は認められない. 5. estrogen微量定量法(蛍光法)による帯下中estrogenを2例について検索せる所,1例に高濃度のestrogenが検出され,1例は検出されなかつた. 以上の成績を総合するに冷凍手術による治癒機転には予備細胞reserve cellに対するx=estrogen+αを含むリンパ液の積極的輸送機序の介在を指摘すると共に,先駆物質estrogenは標的組織細胞に作用し,receptor theoryによる分子生物学的変化より一連の組織変化に移行治癒するものと考えられ,このmechanismは電気焼灼法,高周波凝固法,炎症性ビランの自然治癒機転にも基本的に共通するものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-02-01
著者
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