多嚢胞性卵巣の診断criteria及び臨床内分泌学的研究
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概要
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術前に多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovary Syndrome, PCO)をほぼ100%診断し,楔状切除術の有効な症例をpick upすることに成功した.PCOの診断criteriaとは,(1)無月経第I度,(2)頚管粘液状態が良好であつても排卵しない,(3)clomiphene 150mg迄の増量,さらにHCGを投与しても排卵しない,(4)LH-RH testでLH前値比較的高値,反応良好,より成り立ち,(1)-(4)を満たす症例をGroup-1, (1)-(3)を満たすが(4)を満たさぬ症例をGroup-2と分類した.Group-1では31例中26例排卵,12例妊娠,Group-2では6例中2例排卵,1例妊娠であつた.Group-1では卵巣は白膜が肥厚しているが,全体に柔軟性に富み,小嚢胞が数多くあり,表面は血管豊富なpolycystic typeを示し,Group-2は白膜の肥厚が著しく,硬く,嚢胞の数も少なく,血管に乏しいcirrhotic typeを示し,両者の間では術後成績に大きな差をみとめた. PCOの内分泌学的動態では,尿中estrogen分画は正常または高値を示すが,尿中17-KS, 17-OHCS,血中testosteroneはほぼ正常を示し,血中LHはGroup-1では比較的高値(20mIU/ml以上),FSHは正常かやゝ低く,Group-2ではLHはほぼ正常,FSHは正常かやゝ低値を示した.LH-RH testでは,LHはGroup-1では前値比較的高く,反応良好,Group-2ではほぼ正常かやゝ反応低下を示した.FSHは,Group-1,2とも前値は正常かやゝ低下,反応は正常であつた. このように本邦PCOにおける内分泌動態では,一般にgonadotropine(特にLH)分泌異常をみとめるほかは,卵巣steroid産生能に著しい変化をみとめなかつた. 以上,著者等の提唱せるPCO診断criteriaにより患者に負担をかけることなく,術前にPCOを確実に診断し,しかも術後の排卵成績,卵巣の肉眼的組織学的所見迄推定できることは,臨床上きわめて有意義であると思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-11-01