妊娠時の尿中 estriol 排泄 : 特に基礎体温測定例についての検討
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概要
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BBTにより妊娠成立時の排卵日が明らかな妊婦(A群)と排卵日は不明であるが月経周期が約30日型で整順であつた妊婦(B群)について尿中 estriol (E_3)排泄量を測定し, 次の如き成績を得た.A群における妊娠週日はBBT上昇日の14日前を妊娠第1日として算定した.A群においては尿中E_3値は妊娠第25週頃よりほゞ直線的に上昇して第39週にピーク(37.3±19.7mg/日)に達し, 第40週には僅かに下降する.予定日を過ぎた第41週にはすでに23.3±16.2mg/日と著明に低下している.一方B群においては第34週までは著明な上昇傾向を示さず, 以後急激に増量して第39週に最高値(36.4±11.9mg/日)に達するが, 第37週以後は多少の変動を示しながらほゞ平行状態であり, 予定日超過後も第44週まで明らかな低下は認められない.第40週までは殆ど各週ともB群はA群に比して低値を示している.A群における最終月経と排卵日の関係から推定するとB群妊婦中には計算上の妊娠週数より実際の妊娠持続期間の短いものがかなり含まれている可能性があり, これが両群間のE_3排泄曲線の相違を来す主在原因と思われる.A群の成績から見て, 真の予定日超過群ではかなり急速に胎児一胎盤系の機能低下が起るのではないかと考えられるが, これについてはさらに多数例についての検討が必要であろう.分娩日を基準にして逆週数的に見ると, 少なくとも分娩前5週間においてはA, B両群のE_3排泄曲線はほとんど一致し, いずれも分娩前2週に最高値(約37mg/日)を示して直前の1週間においてやゝ下降している.B群における分娩前1週間の逐日的検討では分娩2日前に明らかなピークが認められたが, このことが陣痛発来と関係を有するものか否かについては今後の検討を要する.分娩当日のE_3値は著明に減少しており, これはおそらく陣痛による胎盤血行の障害に基づくものであろう.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-12-01