子宮静脈血の凝固, 線溶系に関する研究
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概要
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妊婦や非妊婦において, 妊娠の進行や性周期の変動に伴ない, その血液性状に, 種々の変化が生ずることは, よく知られているが, これらは主に肘静脈血での検討であり, 子宮静脈血についての検索は殆んどない. われわれの教室では, 従来から, 性ホルモン直達作用・***脈管外循環に関する研究の一環として, 子宮静脈血の血液性状の検討を行なって来たが, 今回, 私は, 妊婦・非妊婦の子宮静脈血の凝固・線溶能を, 肘静脈血のそれと比較検討して次のような結論を得た. 1. 妊婦・非妊婦の子宮静脈血の血液性状は, 血液凝固学的に, 肘静脈血のそれとは, 明らかに異なるものである. 2. 妊婦の子宮静脈血は, 肘静脈血に比し, 凝固能の亢進があり, これは前者の Estrogen (Est.), Progesteron (Prog.) 量が後者のそれより遥かに多量であることが関係するものと解せられた. 3. 非妊婦においても, 子宮静脈血においては, 周期的な凝固能の変動が認められ, これの一因として, 子宮静脈血の Est. Prog. 量が, 肘静脈血のそれより多量であるためと考えられた. 4. 月経周期では, 性ホルモンの target organ である子宮から流出する子宮静脈血は, 子宮での消費等により, その血中の性ホルモン量は, 肘静脈血のそれより同値あるいは低値が考えられる. しかるに, 本実験の結果から, 子宮静脈血の Est. Prog. 量は, 肘静脈血のそれより多量であることが考えられ, このことは, 塩島等の云う性ホルモンの直述作用の存在を血液凝固学的な面から実証したものと解せられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-06-01
著者
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