絨毛性腫瘍の核DNA量に関する研究
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概要
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正常妊娠絨毛(妊娠初期, 妊娠中期, 満期分娩時), 奇胎, 破奇及び絨腫の Trophoblast (以下Tr.と略す.) について Feulgen 染色による Schiff combined 核DNA量を可視光線使用の顕微分光測光法で測定し比較検討した. 尚, 測光方法は Mendelshon の二波長法に従い, 検体は組織切片を用い核DNA量は Arbitrary unit (任意単位) で表わした. 対照としては, 同一条件下で染色された正常リンパ節のリンパ球核DNA量の平均値を正2倍体(2n)とし, これに照らしつつ histogram を作成した. 正常妊娠初期絨毛では Langhans 細胞(L-細胞)と Syncytium 細胞(S-細胞)とに分けて測定したが両群とも mode は2倍体域から4倍体域に広がる同様な pattern を示した. やゝ細胞群の分布が広いようである. 妊娠中期及び満期分娩時絨毛では mode はやはり2倍体域から4倍体域に分布しており広がりは妊娠初期よりやゝ狭いが, なお妊娠末期と云えども高DNA量の細胞が見られ, 又同時に2倍体以下に分散する細胞の出現もみられた. 正常妊娠絨毛の中にあって特記すべき事は, 基底絨毛細胞 (basal Tr.) の核DNA量の分布の仕方である. mode は2倍体域から4倍体域にあるもの1例, 4倍体域中心のもの4例, 4倍体域から6倍体域のもの2例, no mode のもの3例で2倍体域から10倍体域近くまで広く高域に渡って分布している. これは絨腫に於ける異常な広がりと近似することで注目に値する. 奇胎では絨毛形態部位と anaplastic の強い細胞集団とに分けて観察したが, 前者ではL-細胞群及びS-細胞群共に正常絨毛群に比べてDNA量に富み mode は2倍体域から4倍体域, 更に6倍体域に及んだ. 又やはり S-細胞群の方が分散が広い傾向がある. 後者では8倍体域から10倍体域に及ぶ広い分布を見せ, 正常絨毛群の basal Tr. の分布と比べてなお一層の広がりを見せている. 破奇においても所謂well-formed villi Tr. と anaplastic 細胞集団に分けて観察したが, 前者では mode は2倍体域から4倍体域にあり, 正常絨毛群及び奇胎絨毛群と比べて本質的な差が認められなかった. 後者ではその分布は全く no mode であり10倍体域から12倍体域を越えて極めて広い異常分散を示し, これは絨腫の分布と何等差異を認めるものではないと考えられる. 絨腫では3症例で極めて少数例ではあるがその分布は全く no mode, で12倍体域から14倍体域に及ぶ異常な広がりを見せた.
- 1974-06-01
著者
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