胎盤の統計的観察 : 母体面の面積と臨床的関連について
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概要
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胎盤の母体面の面積, その重量, 及び附着部位等と, 分娩時出血量, 分娩所要時間, 在胎期間, 新生児との関連を検討し, 更に, 胎盤の臍帯附着部について調査し, 次の結果を得た. (1) 胎盤の広さは, 妊娠末期においても, 妊娠週数の増加と共に広くなり, 予定日を過ぎても, 初産, 1回経産では増加している. しかし, 2回経産以上では, 42週を過ぎると増加しなくなる. (2) 経産回数と広さとの関係を比較すると, 初産, 1回経産, 2回経産以上と分娩回数を重ねるに従つて広くなつている. (3) 年令による広さへの影響を調べると初産では, 26〜30才, 経産では, 31〜35才の胎盤が広いことが判明した. (4) 分娩時出血量は, 初産, 経産共に胎盤の広いもの程多かつた. 相関係数は初産+0.220, 経産+0.331であつた. (5) 胎盤の重量と出血量との関係は, 初産では相関係数+0.139となり, 関係がないと言いうるが, 経産では+0.282で相関を否定出来ない. (6) 胎盤の厚さは初産, 経産共に広さと関係しない. (7) 胎盤の重さと厚さとの相関係数は初産+0.328, 経産+0.133であり, 相関を否定出来ない. (8) 広さと分娩所要時間との関係は初産+0.188, 1回経産-0.092, 2回経産以上+0.033で, 初産, 1回経産は相関を否定出来なかつたが2回経産以上では相関がなかつた. (9) 広さ/新生児体重は, 妊娠41〜42週が, 一番低い値であり, 成熟児と未熟児のそれを比較すると, 未熟児が有意に大きい値であつた. (10) 胎盤比を用いて, 成熟児, 未熟児を比較したが, 差はなかつた. (11) 胎盤の附着部位による広さの違いは, 初産では認められないが, 経産では下部附着胎盤が広い. (12) 附着部位による分娩所要時間をみると, 初産, 1回経産で子宮下部, 側方, 底部附着の順に時間が短くなる. (13) 経産では子宮底部附着胎盤の場合が, 予定日超過を起こし易い傾向にあつた. (14) 臍帯の附着部位は, Gausの誤差曲線に一致し, 本来胎盤の中央につくべきものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1973-05-01