視床下部性機能分化の蛍光組織化学的研究
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概要
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Pfeiffer (1936) の報告以来, ラットにおいては性機能中枢の分化の臨界期は, 胎生期乃至新生仔期に存在する事は多くの報告がある. しかしヒトにおいてはこの性機能中枢の分化の臨界期がどの時期に存在するか未だ全く不明である. 視床下部隆起漏斗系に属するモノアミン作動ニューロンが, releasing hormone を介してゴナドトロピン放出に関与しており, そのニューロンの神経伝達物質がドーパミンである事は Fuxe (1964) 等の研究により証明されている. 著者は, 視床下部性機能中枢の分化と, 神経伝達物質が発現する時期はそのニューロンの機能が開始する時期に非常に関連の深いものと考えた. そこで神経伝達物質のモノアミンを特異的にその局在を細胞レベルで明確にとらえるとされる蛍光組織化学的方法 (Falck & Hillarp 1962) を用いて実験を行つた. 先ず基礎実験として, 成熟ラットの視床下部性機能中枢と目される諸核のモノアミン蛍光を調べ, 次にラットの発育段階を追つて視床下部のモノアミン蛍光を検索し, その性機能中枢分化の臨界期とされている, 生後5日目にモノアミン作動ニューロンの蛍光が初めて認められる事を確かめた. 次いで, ヒト胎児の視床下部モノアミン作働ニューロンの蛍光を22例の人工妊娠中絶児で検索し在胎5カ月以後の胎児の漏斗及び弓状核にこれを認めた. ヒト胎児においてラットと同じ実験方法で, 漏斗, 弓状核にモノアミン蛍光を認めてもこれを直ちに同一ニューロンと見做すことは困難であるが, 漏斗の種属による差異或いは, サルにおける実験成績との類似性等を考慮するならば, ほぼ在胎5カ月以前にヒトの性中枢機能分化の臨界期が存在し, 視床下部隆起漏斗系の機能が開始される事を示唆するものと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1973-05-01
著者
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