自己採取スメア法による子宮癌集団検診法の開発に関する研究
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概要
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子宮癌集団検診の能率化を計るため腟スメアの自己採取ピペットを考案し, 自己採取スメア法を確立し, 本法による子宮癌集団検診法を開発した. 結果を概括すれば次の通りである. 1. 腟スメアの自己採取ピペットは20%メタノール, 生食水及び指示薬ロゾール酸を主成分とする約6mlの洗滌液を含有するプラスチック製ピペットである. 被検者自身が本器を用いて腟内な洗滌吸引採取した腟スメアについて細胞診を行なう方法を自己採取スメア法と呼ぶ. 2. 自己採取スメア法実施に当り, 急速乾燥固定法の採用及び細胞診判定基準の改良により, 正診率の向上を計るならば95%迄達せしめることが出来る. 3. 自己採取スメア法による子宮癌集団検診を昭和40年より46年までの7年間に35,476人に実施した結果, パパニコロウのクラスIII以上と判定された要精検者数は1,002人(2.8%)で, 要精検者の精検実施後に上皮内癌30例, 子宮頚癌I期21例, II期2例, 子宮体癌2例, 高度異型上皮15例を発見した. 上皮内癌を含む頚癌発見率は0.15%であつた. 4. 集団検診の実験地区として, 愛知県南設楽郡作手村及び愛知県西尾市を選び, 昭和40年以来, 毎年1回の検診を実施した. 作手村では初年度, 対象婦人人口の65%にあたる受診率, 西尾市では全市の対象婦人人口の45%の受診率を得た. 5. 自己採取スメア法による子宮癌集団検診法は確かに能率的であるが, 反面偽陰性の対策を慎重に考慮する必要があり本法の適用は自ら制限される. 即ち自己採取スメア法による集団検診は婦人科診察を受けることが仲々困難な地区の婦人を対象とし, 可及的受診率を高め, 少なくとも年1回宛実施するならばその地区からの子宮癌死亡者の減少を計るのに役立つであろうと考える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1973-02-01