人羊膜細胞の電子顕微鏡的研究
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概要
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正常妊娠初期, 中期, 末期の羊膜上皮細胞と妊娠中期および末期の臍帯羊膜上皮細胞について電子顕微鏡的に観察をおこない, 羊水過多症羊膜上皮細胞の所見とあわせてつぎの結果をえた. 1) 卵膜極羊膜上皮細胞の羊水腔に面する自由表面のmicrovilliは妊娠初期にはpolypoid状で, 中期にはその数を増し, 末期には減少あるいは消失する. 胎盤側羊膜上皮では細小で数も多く, 妊娠全期を通じてあまり変化せず, いずれの場合もmicrovilliに接してsurface coatをみとめる. 2) 羊水過多症胎盤側羊膜上皮細胞および臍帯羊膜上皮細胞にmicrovilliが極度に膨化したcytoplasmic projectionをみとめる. 3) 羊膜上皮細胞の細胞質は細線維で満たされているが, 妊娠初期より中期に向つて, Golgi装置, 粗面小胞体および糸粒体は著しく発達し, 粗面小胞体の脱ribosome化およびcoated vesicleを多数みとめ, また, 糸粒体は弧状のcristaeを有し特徴的である. 妊娠末期に至るにつれGolgi装置は貧弱となり, 小胞体は減少し, 糸粒体は萎縮形となる. また多数の脂肪滴が出現する. 細胞質のほとんどは細線維によつて満たされる. 4) 妊娠初期より羊膜上皮細胞中にferritinを含有する顆粒が存在する. 5) 羊水過多症羊膜上皮細胞では, 妊娠末期でもなおGolgi装置, 小胞体, 糸粒体などの小器官の著しい発達がみとめられる. 6) 妊娠初期羊膜上皮の隣接細胞間隙は, しばしば拡大するが細胞膜は平滑である. 妊娠中期, 末期では細胞間隙は著しく拡大し, intercellular canalを形成し, 間腔に向つて長い桿状の細胞質突起が多数突出する. 突起のところどころにdesmosome結合をみる. 7) 臍帯羊膜上皮では, いずれの時期にも隣接細胞間の拡大はみられない. 8) 妊娠初期卵膜極羊膜上皮細胞は, 基底膜は不明瞭であり, 胎盤側で明瞭である. 基底部はほぼ平担で, ときにゆるやかな突出をみるのみである. 妊娠中期には細胞基底部はfoot processを形成し, 妊娠末期にはreticular structureとして観察されるようになり, これは一層の基底膜にふちどられ, さらにdenseな微小膠原線維層に埋没する. 以上の所見から, 妊娠初期, 中期羊膜上皮は旺盛な分泌活動を行ない, かつ鉄その他の代謝に関与する. 妊娠末期羊膜上皮においては, 基底面を中心とする盛んな水分の交換に対応する構造を呈している.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1972-03-01
著者
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