子宮頚癌治療上のBetatron電子線の価値に関する研究
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概要
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子宮頚癌の原発巣に東芝製15MeV Betatron電子線を, アルミ製, または, 鉄製の円形照射筒によつて腟内接着照射を行い原発巣の変化を線量ごとに, 臨床的ならびに組織学的検索を加えた. また, 手術可能頚癌では, 一定線量照射後, 岡林式広汎性子宮全剔術 (以下, 広汎全剔と略す) を施行し, 剔出材料について組織学的検索を行い, その効果を再検討した. 対象は, 子宮頚癌 (扁平上皮癌) 71例で, I期癌12例, II期癌25例, III期癌30例, IV期癌4例である. 1. I期癌では, 6,000rad照射後, なお組織診で1例に癌細胞遺残を認めた. 2. II期癌では, 25例中, 6,000rad照射後も11例に癌細胞遺残がみられたが, さらに4,000rad追加照射, 10,000radの時点では癌細胞消失84.2%であつた. 3. III期癌では, 6,000rad照射後, 40.0%に10,000rad照射後, 80.0%が組織診上, 癌細胞の消失をみ, 癌細胞を確認できなかつた. 4. 対象71例のうち, 照射後20例に広汎全剔を行い, 子宮頚部を中心とした連続切片の検索では, 6,000rad照射群で58.3%に対し, 10,000rad照射群では25.0%の癌細胞の遺残を認めるに過ぎなかつた. 5. 手術例について, 発育形式と癌細胞遺残と比較してみると, 内向性発育のものより外向性発育型に, より効果が大であつた. 6. また癌細胞の成熟度による比較では, 成熟型に効果が悪い傾向をみた. 7. 腟スミアは, 照射線量の増加とともに, 4,000〜6,000rad照射附近を境として改善傾向を認めた. 8. 出血, 帯下は4,000rad照射前後より減少しはじめ, 6,000rad照射終了前後には, 多くの症例で消失し, また腫瘍自体も4,000〜6,000rad前後より縮小しはじめ, 被苔形成, 平滑化が著明となつてくる. 以上, 治療対象は著しく限定されるが, これを誤まらなければ, I, II期癌の原発巣は電子線10,000〜15,000radで癌組織は破壊, 潰滅され消失するものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1972-02-01
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