子宮頚癌術後尿管瘻に関する研究 : 発生防止法としての尿管カテーテル法
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概要
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子宮頚癌術後に発生する尿路系合併症, 殊に尿管瘻の発生は, 手術術式の上から今日まで或る程度不可避的なものとされており, 種々な対策が講じられてはいるが未だ完全な防止策は確立されていない. 著者は第1編において, 動物実験の成績から, 栄養血管の切断により根治手術そのものが既に瘻発生を起こしやすい基盤を形づくる上に, 尿管下部処理時の無自覚損傷, 感染がこれを一層助長するが, 生体の自然治癒機転を円滑に行なわしめることによつて, 瘻発生の防止が期待できるとの推論を下した. 即ち, 尿管の異常屈曲を防いで尿流通をはかり, 尿管の負荷を軽減し, この間に尿管の自然修復機転を期待するのである. この目的に著者は尿管カテーテル法を行なつた. 子宮頚癌根治手術例130例に本法を実施したが未だ瘻発生をみたものはなく, 本法が頚癌術後尿管瘻防止に極めて有効であることを実際に立証することができた. 著者の行なつている尿管カテーテル法は, カテーテルにポリエチレン製Fr.size No.6のものを用い, 手術直前にこれを尿管に深く挿入し, レ線にて位置を確認してカテーテル尖端が尿管内にあるよう調節した後固定し, 膀胱へはFoleyカテーテルをおく. 術後は管腔閉塞と感染予防のため抗生物質等の定時的注入を行ない, 7〜14日で抜去する. 本法実施中の細菌検査では, カテーテル排泄尿からは時たまカンジダを証明したに過ぎず, 血尿の持続は概むね6〜7日で, その推定出血量は1日平均28gであつた. また本法実施例の退院時所見から尿管走行の異常屈曲も防止されると考えられ, 実施例と非実施例とに分けて再来例のレノグラム所見を比較しても, 両者の間に大差はないがむしろ実施例の方がよい成績を示し, 本法による尿管機能障害は認められず却つて術後上部尿路系機能保持に有効であると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1972-02-01
著者
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