Radioimmunoassayによる非妊並びに初期妊娠婦人の血中estrogen動態について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
estrogenのhuman reproductionに占める役割については今日疑いの余地はない. しかしその血中濃度は極めて微量で, その動態ひいては生理作用の詳細に関しては明らかでない部分が多い. そこで著者はErlanger法に従いestrone-17-oxime-bovine serum albuminを合成し, これを用いて家兎estrone抗血清を作製し, estroneとestradiolのradioimmunoassayの検討を行ない, 同時に, 非妊並びに初期妊娠婦人の血中estrogenの測定を行ない次の結果を得た. 1) 家兎estrone抗血清の力価は接種後日時の経過とともに増加し, 29週後では25×10^4倍稀釈までその力価が高まつた. 2) 本抗体の交叉反応率は, estroneを100%とすると, estradiolで100%, estriolで2.85%, 16-epiestriolで13.3%, 16-ketoestradiolで13.3%. また中性ステロイドとはほとんど交叉しない. 3) 本測定法による最低測定感度はestrone, estradiolともに20pgである. 4) 非妊時のestroneの血中濃度は卵胞期で, 29±15.7pg/ml (以下省略), 排卵期で131±62.9pg, 黄体期で27±14.6pgであつた. また血中estraadiol濃度は卵胞期で87±34.5pg, 排卵期で352±128.8pg, 黄体期で110±89.2pgであつた. 5) 初期妊婦における血中estradiol濃度は, BBT高温第1日目より起算して第40日目まではほとんど黄体期のそれと同濃度であつたが, 第41日目以後急増し, 約4倍の高濃度となつた. 以上の結果より非妊時では血中estradiolはBBTの体温上昇日の前日にsurgeを示し, 排卵機構に重要な役割を占めるホルモンであることが示唆された. また妊娠初期においては, Csapoのluteoplacental shiftの時期に一致して, 血中estradiolは急増し, 本ホルモンの産生分泌の場が, 黄体より絨毛へ切換えられたことを示唆するものと思われる.
- 1972-11-01