数種薬剤の腟トリコモナス (Trichomonas vaginalis) に及ぼす影響に関する電子顕微鏡的研究
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概要
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1) Trichomonas vaginalisに各種抗トリコモナス剤を作用させ, その微細構造の変化を観察することは作用機序を明らかにする一つの手懸りとなるものである. この目的から, T.vaginalisの微細構造を詳細に検討すると共に, 抗トリコモナス剤の内, 抗生物質としては, trichomycin, azalomycin-F, 化学療法剤としてはmetronidazole, 消毒剤としてはクレゾール, 昇汞および塩化ペンゼトニウムによる変化を観察した. 2) 最小発育阻止濃度を測定し, その10倍濃度のものを使用した. trichomycin:7.8mcg/ml, azalomycin-F:62.5mcg/ml, metronidazole:15.6mcg/ml, 消毒剤では0.1%クレゾール, 0.01%昇汞, 0.1%塩化ペンゼトニウムをそれぞれ2時間作用させた. 電顕資料はオスミウム酸固定, エタノール系列による脱水, 樹脂包埋後, 超薄切片を作製し, 日立製HU11A型電子顕微鏡で観察した. 3) 薬剤による変化:1. trichomycinによる変化, 細胞質はdensityが低く全体として明るくなり, densityの高い粒子が少さく凝集するようにみられた. 2. azalomycin-Fによる変化, trichomycin作用時とほぼ同様である. 3. metronidazoleによる変化, 細胞質内に海綿状のdensityの低いものが見られ, 空胞は増大する. 4. 消毒剤による変化, 細胞膜は断裂し細胞質は不規則な凝集を来す. 結論 数種抗トリコモナス剤をT.vaginalisに作用させた結果, 抗生物質である, trichomycin, azalomycin-F化学療法剤であるmetronidazoleでは細胞質および核質の変化が主であり, 細胞膜および核膜には大きな変化を与えないから, 細胞質の代謝系への侵襲が考えられる. 一方消毒剤では, 虫体の侵破壊がみられ, 蛋白の変性をおこすものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1972-01-01
著者
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