子宮頚癌根治手術後の尿路合併症に対する臨床的研究
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概要
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最近14年間に名大産婦人科で入院治療した子宮頚癌の成績は, 1023例中死亡452例で生存率は55.8%である. このうち癌死は385例85.2%, 他病死は67例14.8%であつた. これを手術例のみについてみると, 617例中死亡162例で生存率は73.9%である. このうち癌死は116例71.6%であるのに対し他病死は46例28.4%と手術例では他病死の比率が高くなつている. 他病死のうち尿路疾患は総治療例では34.4%を占め, 手術例では43.4%と更に高い割合を占めて居り, 頚癌術後の尿路疾患が患者の予後を左右する重要な因子であることが判る. 今回著者は頚癌術後の排尿機能回復促進に資するため, 骨盤神経温存法を行い, 更に抗ChE剤ubretidの投与を行い, また尿路感染症予防のため膀胱内抗生物質持続注入法flux methodを試みた. (1) 骨盤神経切断例と温存例を比較すると, 留置抜去後尿閉期間は, 切断例2.8日, 温存例1.4日, 自尿開始日は各々12.2日, 10.9日, 自尿試験終了日は各々22.5日, 20.1日である. 尿路感染症顕症化は入院中切断例で36%, 温存例で24.7%, 退院後では各々32.7%, 23.2%である. 1年以上たつた遠隔成績では, 尿意の有無, 腹圧の必要, 便秘において両者の間に5%の危険率をもつて有意の差が認められた. (2) ubretidは1日1錠5mgを手術後5日目より10日間経口投与した. 留置抜去後尿閉期間は対照例の1.4日に対しubretid投与例では0.7日, 自尿開始日は各々10.9日, 9.5日, 自尿試験終了日は各々20.1日, 17.8日である. (3) flux methodはRuschの三路系カテーテルを用い, 生理食塩水500ml中にdextromycin250mg混合液を1日約1000mlの割合で膀胱内に持続注入した. 尿路感染症の顕症化については, 対照例では入院中24.7%, 退院後23.2%であるのに対し, flux methodを行つたものでは入院中14.3%で退院後は一例の発症もみていない. 尿中細菌出現日は対照例の術後11日目に対しflux method症例は19.5日目であつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1972-01-01