産婦人科領域に於けるアルギニンの研究
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概要
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第1編アルギニン(以下アと略記す)の呈色反應並にアルギナーゼ或は臓器との關係に就て業績を綜説し,尚Kapeller-Adlerヒスチヂン反應に就て参照した. 第2編Duboscq比色計を用いて血清中アを比色定量する場合の血清の稀釋度に就て檢討し,600〜800倍に稀釋した場合が最も正確な値を得る事を確認した.又健康男子並に女子及び各月別妊婦の血清に就て,遊離アと水解アとを比較檢討した結果,両者の數値は夫々平行し,且つその差は僅少であるから血清中のアの大部分は遊離して存するわけで,從つて水解に要する時間並にそれによつて生ずる實驗誤差を少なくする點から考えて,遊離アを比色定量する方が良いと云う結論に達した. 第3編ア比色定量に對する光電光度計の應用法を檢討し,Duboscq比色計よりも鋭敏且つ正確な價を得る事を認め,光電光度計によるア定量法を確立した.尚光電光度計を用いて,正常健康女子並に各月別妊娠及び産褥婦の血清ア量を比較し,妊婦では健康女子よりも多く,分娩後は妊娠中より少い事を追認し,又同一妊婦の血清ア量を妊娠月數に從つて追跡し,第3ヵ月を最高としてそれ以後は漸次稍ゞ減少する結果を得た. 第4編健康女子の血清ア量を檢討して,月經中の者では多い事を認め,更に同一女子に就て之を追究して,月經周期の第1〜3日に増量する事を認めた. 第5編子宮並に子宮附属器疾患による手術患者に就て,両卵巣剔出群と一側卵巣剔出群との2群に分けて手術後の血清ア量を追究し一側剔出群ではア量が健康女子のそれ程度迄増すが,両側剔出群では血清ア量は健康女子よりも増すことを認めた. 第6編性腺刺戟ホルモン並にエストロゲンが試驗管内で家兎肝アルギナーゼ作用に對し如何なる影響を及ぼすかを追究し,胎盤性性腺刺戟ホルモンは特別の影響を與えず,前葉性性腺ホルモンは該作用を稍ゞ抑制し,エストロゲンは之を著明に抑制することを認めた. 第7編白鼠に性腺刺戟ホルモン並にエストロゲン水溶液を注射した後各臓器のア含有量を測定し,胎盤性性腺刺激ホルモン投與により水解ア量の減ずる事を認めた. 第8編家兎の睾丸或は卵巣を剔出して去勢し,及び雌家兎をレ線去勢して去勢前後の血清ア量を比較し,去勢により著しく増す事を認めた. 第9編1)卵巣剔出者で剔出後血清ア量の増した事,成熟婦人の月經第1〜3日に血清ア量の高い事,及び去勢動物で之が増すことから,エストロゲンの稍褪によつて血清ア量は増すと考えられる.而して此の機序は單にエストロゲンのアルギナーゼに對する作用と云う様な簡單なものではないと思われる. 2)妊娠時の血清ア量の増加機序は,エストロゲン或は絨毛性性腺刺戟ホルモンを以つて説明し得ない.恐らく妊娠時の肝機能の變化も関係するのではないかと思われるが,此の點は更に考慮を必要とする.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1954-05-01
著者
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