妊娠, 産褥の尿路変化に関する泌尿器科的研究, 特に腎髄質機能に対する滲透圧計 (Osmometer) の臨床的応用価値について
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概要
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妊婦及び褥婦の尿路変化についての報告はこれまでにもみられるが, 下部尿路から上部尿路に至る変化の一連の泌尿器科的検索は比較的少ない. 著者は膀胱内視鏡検査, X線撮影, 膀胱内圧測定, 細菌尿に対するTTC test, Catalase test, Radioisotope Renogramによってこれらの変化を観察する傍ら, 近年臨床上注目をうけている滲透圧計 (Osmometer) を用い Fishberg濃縮試験時の最高尿滲透圧濃度 (Uosm) max, 滲透圧クリアランス (Cosm), 遠位側水再吸収量 (T^C_<H_2O>)を測定し検討を加えた. 1) 妊婦115例では頻尿を主とする排尿障害の合併が56.5%あり, これらは妊娠月数の進む程高率に出現する傾向を示した. また初産婦での産褥尿閉持続時間は経産婦に比べてやゝ延長し, 自然排尿開始後の残尿の回復遅延がみられた. 2) 妊娠時52例の膀胱内視鏡所見では膀胱後壁の隆起, 右側壁陥凹, 充血, 血管拡張が著明で産褥初期ではこれらの所見の多くはまだ残存している. 3) 妊帰51例, 褥婦30例で測定した膀胱容量は何れも一般に大であり, 16例でみた膀胱内圧は低下の傾向を示している. 4) 妊婦23例の膀胱前後像では膀胱上縁の陥凹, 右側偏位像が特徴的で, この傾向は産褥初期でもまだ残存している. 5) Osmometerによる中毒症妊婦48例のFishberg濃縮試験時の (Uosm), (Cosm), T^C_<H_2O>測定では中毒症の程度が強くなる程, 腎髄質機能の低下がみられ, Radioisotope Renogram型が排泄遷延型になる程滲透圧濃度も低値を示した. 6) 妊婦細菌尿に対するScreening testとして TTC testを行ない尿路感染症 (菌数10^5/ml以上) 20例中18例 (90.0%) に陽性で, ダラム陰性桿菌に陽性率が高く, 判定では4時間以上が望ましいことを認めた. また細菌尿35例でのCatalase test単独施行では26例 (74.3%) に陽性でTTC testより陽性率は低かった.
- 1968-09-01