正常新生児の出生後24時間以内における血液成分の変動に関する研究
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概要
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新生児期における心肺機能の急激な変化の一端をうかがうために, 生後24時間以内における正常新生児の赤血球を中心とする血液成分の変動を詳細に追求し, 次いでその変動の本態に関して推論を試みた. 対象は正常分娩新生児で, 生後1週間迄に異常を認めなかった62例の足踵動脈化毛細管血を材料とした. 1. 血球容積, 血色素量, 赤血球数は2〜4時間後には出生直後に比して有意に上昇し, 以後は再び低下する傾向を有する. 2. この三値の変動は平行的ではなく平均赤血球血色素濃度は2〜8時間では有意に増加し, 10〜18時間では2〜8時間値に比して再び有意に減少する. 3. 生後24時間における体重減少は平均4.3%であり, この期間に血漿Na値に著変は認められず, 血液成分の変動に脱水の役割は殆んどないと言えよう. 4. 血漿総蛋白は24時間後には有意の減少を示すが, 蛋白分画比は変化していなし. 5. 血液PHおよびP_<C0_>2は2〜4時間以後は7.4附近, 35mmHg附近に安定するから赤血球容積変動の原因とは考え難い. 6. 臍帯血赤血球抵抗 (Ribiere法) は成人正常値に比して特に減弱は認められず, 溶血による赤血球の減少は無視してよい. 以上の成績より, 血漿から蛋白成分を除いた液体成分の, 血管および血球内・外の移動が出生後数時間を境として起る事が赤血球諸値の変動の主体をなしているものと推論した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-09-01