ヒト胎盤絨毛上皮細胞におけるステロイドホルモンの分泌に関する組織化学並びに電顕学的研究
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概要
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周知のとおりヒト胎盤絨毛においてはprogesteroneとestrogenとが生成分泌されるが, これに関する形態学的研究は比較的少ない. 筆者はステロイドホルモン(スホ)生成過程において重要な役割を果すGlucose-6-phosphate dehydrogenase (G-6-P DH),3β及び17β-hydroxysteroid dehydrogenase (3β-, 17β-olDH) その他の酵素活性の局在について組織化学的検索を行ない, さらにin situにおけるスホ負荷絨毛を用いてスホの生成過程について電顕学的に追求し次の成績を得た. 1. G-6-P DH活性はNADP依存性であり, 妊娠時期に関係なくSyncytium(Sy)細胞で中等度の陽性を示した. 2. Δ^5-3β-ol DHを含めた3β-ol DH活性はNAD依存性が強く, 妊娠時期に関係なくSy細胞並びに絨毛芽で著明である. 3. Sy細胞の17β-ol DH活性はNAD依存性であり, また17β-estradiolに基質特異性を示した. 血管系のそれはNAD及びNADPのいずれにおいても基質とした17β-estradiolとtestosteroneに対して活性を認める. 4. pregnenolone, progesterone, Δ^4-androstendione負荷絨毛を用いる電顕所見においては, いずれもSy細胞の小器官特に滑面小胞体における著明な拡大, 不正形, 大小不同とMitochondria (Mt) の増加, 肥大を認め, Cristaeの著明な増加とvesicular像を認めた. また類脂肪顆粒の増加も比較的著しく, さらにこれに近接したMtを認めた. またこれらの所見はpregnenoloneの大量負荷絨毛において一層著明であった. したがって以上の成績からヒト胎盤におけるprogestroneまたはestrogenの生成分泌がSy細胞に局在し, 恐らくSy細胞の滑面小胞体とMtの有するスホ生成酵素の特異作用によって営まれる生成機構の1つであろうと推定する.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-09-01
著者
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