胎児心電図における雑音の分析とその除去対策に関する研究
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概要
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胎児心電図が発見されてから, すでに半世紀以上経過しているが, 現在なおその臨床的価値は比較的限られている. それは母体を経て誘導される胎児心電図の振巾がきわめて小さく, 種々の雑音の混入のため波形の分析が困難で, 検出率も劣るためである. 著者はこのような胎児心電図の障害を除去し, その臨床価値をたかめるため, まず腹壁誘導によって得られた胎児心電図について, その信号としての諸特性を検討し, それを母体心電図やその他の雑音の諸特性と比較検討した. ついで胎児心電図の誘導経路において雑音発生の原因となる諸因子を検討し, 増巾器の内部雑音や, 電極における雑音の程度と, それ以前の生体側における雑音の混入程度や除去方法について比較検討した. その結果, 胎児心電図においてもっとも大きな障害となるのは生体側に起因する雑音で, その主なものは呼吸などによる動揺性雑音と腹壁筋の活動電位であることをたしかめた. 又その対策として腹壁の動揺を防ぐ構造の電極の工夫をおこなった. 又自発的な腹壁筋の活動電位は麻酔などによる以外, 完全に防止することが出来ないので, 誘導法と電気的回路による方法を組み合わせることにより, 雑音中の信号を検出する2,3の新しい方法を提案した. すなわち, 多誘導の加算ないし乗算によって信号を強調する方法, 多誘導に同時に存在する信号のみをとり出すparallel coincidence法, 信号の位相差により, 信号と雑音を判別する位相差表示方式, ランダム雑音中より周期性信号を検出する方法として自己相関計を簡易化したSerial Coincidence法等である. 最後にこれらの新しく提案された方式を組み合わせて連続的に胎児心拍数を監視する装置を開発し, これによって比較的雑音混入の多い分娩時の胎児心拍数の連続監視が可能であることを示した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-06-01