妊娠中毒症における昇圧因子に関する研究 : Catecholaminesに関する検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
生体にstressが加わるとcatecholamines〔(以下CAと略), adrenaline (以下Aと略), noradrenaline (以下NAと略), dopamine (以下DAと略) の総称で特にA, NAを指す〕が増量することは基礎的並びに臨床的な実験によって確かめられている. Selyeのstress学説による適応ホルモンの概念の導入によりCannonのemergency reaction と stressとの関連が問題とされて来たが, Selye自身も強調している如く, 適応ホルモンの機転が唯一の非特異的防禦手段ではなく, 自律神経系も又重要な役割を演じていることは疑いがない. 妊娠という試練を母体はどう受け止めるか. 妊娠中毒症はこの様な負荷に対する異常反応に基づく生体のbalanceの破綻 (換言すれば適合不全) によって起ると解されないだろうか. 著者はこの様な観点から自律神経系のneurotransmitterであり昇圧物質でもあるCAの妊娠中毒症における動態について検討を加えた. 尚測定に当っては尿中CAの測定に際し問題となっていたDOPAを除去する為, イオン交換樹脂Duolite C-25を使用した. その概要は以下の如くである. 1) 妊娠後半期になるとNAの平均値は上昇し, 高値を示すものもあり, かつバラツキも著明となり自律神経系の不安定性が示唆された. 2) 妊娠中毒症では毎日連続的に測定すると, NA値は必ずし.も血圧の動きとは関係なく, 周期的な波状の変動を示した. 全平均値は妊娠末期と差がない. この事から血圧上昇には血管のNAに対する感受性の光進も又重要な因子となることが推測される. 3) 分娩子癇の患者では子癇発作後 pheochromocytoma に於てのみみられる様な, 正常人の約30倍にも達するNAがspike状に放出され, 一たん減少後, 再び一見rebound的に上昇している. これは子癇独自の現象で, その意味ずけはいまだ困難である. 4) 尿中CA値と血圧とは相関関係が明らかでなく, CAが一次的に昇圧機序レこ関与するとしても, 二次的には, 他の昇圧機構ないし血圧維持機構が作働することが推測される. すなわちCAが妊娠中毒症の一元的な原因とはいえないが, 交感神経系が妊娠中毒症発症に関与していることは充分考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-05-01
著者
関連論文
- 女子***結核症の研究
- 婦人科腫瘍患者血清中のCA125(非ムチン性卵巣癌特異抗原)
- 189. 膣トリコモナスと膣カンディーダの拮抗作用について
- 126.妊娠中毒症後遣症に対する新しい検討(第2報)
- 新女性医学体系43「婦人科腫瘍の手術療法」 : 総編集武谷雄二, 編集青野敏博, 麻生武志, 中野仁雄, 野澤志朗, 担当編集塚本直樹, 中山書店, 32.000円(消費税別)
- 管群ミスト冷却熱伝達に及ぼす離脱液滴の影響
- (その2) 妊娠中毒症 10. 妊娠時の NEFA の動態について ( 妊娠に関する群)
- 29.妊娠中毒症に関する追跡的研究(第5群妊娠中毒症)
- 70. 妊娠中毒症後遺症のレノグラムによる臨床的考察
- 妊娠中毒症における昇圧因子に関する研究 : Catecholaminesに関する検討
- 示34. 妊娠中毒症に於ける昇圧因子について : Noradrenaline(NA)に関する検討
- 140. 腎の位置及び形態異常と妊娠中毒症の発来機転に関する一考察
- 190. 妊娠中毒症後遺症の綜合的検討
- 53. 妊娠中毒症と腹水 : 自験例を中心として
- 96. 妊娠中毒症におけるNA及びAの消長と血管収縮反応性について
- 96.妊娠中毒症におけるNA,及びAの消長と血管収縮反応性について
- 126.妊娠中毒症後遺症に対する新しい検討
- 月經正常婦人,更年期婦人の尿中Pituitary Gonadotropinの消長とSteroid Hormoneとの關係に就いて
- 84. 妊娠經過と尿中の17-Ketosteroid,Pregnanediol,17-hydroxycorticoid,及びphenolsteroid,殊にchromatographyによる17-Ketosteroidとphenolsteroidとの分劃について