妊娠ラット母仔の蛋白質代謝異化過程に関する酵素学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠時における毋児の蛋白質代謝異化調節機構の一端を知るために, 非妊, 妊娠ラットの毋体については, 肝arginaseとornithinetranscarbamylase活性(以下OTCと略す), 肝および血清arginineとornithine濃度、胎仔肝, 胎盤についてはOTC活性を測定した. また, 妊娠ラットを低蛋白食で飼育した際の毋, 仔肝および胎盤のOTC活性についても検討した. 1 毋体肝arginase活性は, 妊娠経過とともに減少したが18日目以後は著増した. この機序についてさらに詳しく検討するために, a) arginase活性を核分画と非核分画と分けてみたが, 両者の推移には変動がなかつた. b)また, 毋体肝OTC活性, 毋体肝および血清のornithine値とarginine値からも, このことを解明できる成績が得られなかつた. したがつて, 妊娠時における毋体肝arginaseの推移は, ureacycleのメンバーとしてのほかに, 特異な代謝意義をもつているのかも知れない. 2 胎仔のOTC活性は, 17日目で微量ながら認められ, 以後しだいに活性が増加した. また, 胎盤にも微量のOTC活性が認められた. 3 飼料N含有率制限による肝OTC活性の影響は, 毋体では非妊群と同様にN含有率が低いほど活性は低かつたが, とくに1.0, 2.0%群では応答性に異常がみられた. 胎仔では20日目までは応答性がなく, 21日目になつてこれがあらわれた. また, 胎盤は20, 21日目ではN規制に対して応答性を示した. 以上のごとく, 妊娠時の毋体蛋白質異化代謝は亢進像が認められた. また, この態様の特異点について言及し, 2, 3の問題を提起した. また, 胎児は在胎晩期には蛋白質異化代謝機能を獲得するが, これ以前ではこの機能は毋体に依存していることが推定できた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-07-01