胎盤潅流実験による胎盤性progesteroneの前駆物質に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
妊娠時に多量のprogesteroneが産生されることは妊娠時の内分泌環境の特徴の一つであり, このprogesterone産生の場としては胎盤が大きな位置を占めていることは疑いのない事実となつている. しかしこの胎盤性progesteroneの生成機序および前駆物質に関しては未解決の問題が多々存在する. 著者はまず満期胎盤組織の培養実験によりcholesterolからprogesteroneへ転換されることを確認した後, 満期娩出胎盤の潅流実験を行ない, acetate, cholesterol, pregnenolone-sulfate, 20α-dihydroprogesteroneからprogesteroneへの転換を検討し, それらが胎盤性progesteroneの前駆物質としていかに関与しているかを追求した. (1) acetate-1-^<14>C, cholesterol-7α-^3Hを基質として2時間潅流した結果, acetateからprogesteroneへの転換は認められなかつた. cholesterolからは0.07%転換された. (2) pregnenolone-sulfate-16-^3H, 20α-dihydroprogesterone-4-^<14>Cを基質として1時間潅流した結果, pregnenolone-sulfateは2.8%, 20α-dihydroprogesteroneは18% progesteroneへ転換された. (3)これらの成績を利用しcompartment modelの概念を導入してkinetic analysisを行なつたところ, 胎盤性progesteroneの約30%は血中pregnenolone-sulfate利用によるものであり, 約30%は臍帯血中20α-dihydroprogesteroneの利用により, 約40%はcholesterol等から胎盤内で生成されていることが推測された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-07-01