胎児発育機序よりみた母, 児血清, 羊水中の成長ホルモンとインスリンについて
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概要
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成長ホルモンおよびインスリンが, 胎児発育機序の上でどのような影響をあたえているのかについて知るために, 妊娠4カ月より10カ月までの母児血清および羊水中の成長ホルモン量およびインスリン量をradioimmunoassayによつて測定した. さらに, ラット脂肪組織に在胎中期および晩期の胎児血清をそれぞれ添加し培養して, 遊離脂肪酸放出効果をしらべた結果について検討を行ない, 以下のごとき知見が得られた. (1)成長ホルモンは, 母体血清では非妊成熟婦人の値と著差がなく, 妊娠経過によつてもほとんど変動しなかつた. 羊水では母体血清よりもやや高い値で, これと同様に推移した. しかし胎児血清は, 在胎4カ月で, すでに101.3±40mμg/mlと母体血清の30倍近い高値を示し, 以後増加して7カ月で最高となつたが, 8カ月以後は著減した. (2)インスリンは, 母体血清および羊水では妊娠経過とともに増加した. 胎児血清はいずれも母体血より低値であり, 5カ月で11.5μU/mlで以後増加し, 7カ月で14.7μU/mlとなつたが, 以後はほとんど変動しなかつた. (3)各測定値の相関性については, 成長ホルモン, インスリンがともに最高値を示した7カ月では, 胎児体重との間に有意の相関が認められた. (4)無脳児の場合は, 成長ホルモン値が7.0±6.2mμg/mlで, 正常新生児に比べて有意の低値を示したが, インスリンは9.7±9.7μU/mlで, 正常新生児と差がなかつた. (5)ラット脂肪組織を用いて培養実験し, これに胎児血清を添加した際の遊離脂肪酸放出効果は, 6, 7カ月群では, 対照に比べ87.1%の遊離脂肪酸放出が認められたが, 9, 10カ月群では, 15.6%に低下し, 無脳児群では, 10.6%とさらに低い結果が得られた. 以上の成績から, 胎児の成長ホルモンおよびインスリンのうごきは, 在胎中期は蛋白同化を促進させ, 晩期には脂質蓄積を促進させるようにはたらくがごとき方向性をもつており, このことは, すでにわれわれの教室で明らかにした胎児の栄養素蓄積状況とよく符合している. したがつて, この面からいえば, 胎児発育には胎児自身のホルモン調節能が大きな影響力をもつていることが推定できる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-07-01
著者
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