去勢, 産褥, 及び産褥去勢授乳ラットの下垂体 FSH, LH分泌の動態
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概要
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女性性機能の最も重要な現象である排卵を左右する下垂体前葉FSH, LH分泌について, 内分泌学的に最もdynamicな状況下に於ける雌ラットを対象としてその動態を解明せんとし, 同一群の材料につきFSHに対しては, Steelman-PohleyのHCG-augmentation法を, LHに対しては ParlowのOAAD法を用いて同時的に測定し次の如き結果を得た. (1) 正常成熟雌ラット去勢後, 前葉FSH, LH含有量は共に逐日的に著明な増加傾向を少くとも60日目まで示す. 即ち去勢により卵巣ステロイドの影響が除かれると negative feed back的に性上位部は機能亢進状態となり, 前葉FSH, LH共, 同様に著増することが確かめられた. (2) 胎児と共に多様なホルモンの産生源である胎盤が急激に排出される分娩は, 母体の内分泌環境に重大な影響を与えると思われるが, ラット等の分娩後排卵はそれを象徴する1つの現象と考えられる. 此の時の前葉FSH, LH分泌の動態を追求した研究は全くみられない. 分娩後排卵は産褥1日の夜から2日の朝までの間に起るが, 前葉LH含有量は妊娠末期の高値から産褥1日にわけて有意に著減し, この時血中に放出されて排卵を惹起するものと考えられる. FSH含有量は妊娠末期の高値から産褥2日に始めて有意な減少を示すが, FSH, LHの減少の時間的ズレの分析は排卵機序の解明にとって興味深いものと思われる. 授乳期間中の前葉FSH, LH含有量は比較的低いレベルに維持され, 卵巣の所見からその血中レベルも低いものと考えられる. (3) 授乳が性機能に大きな影響を与えることはよく知られているが, 前葉FSH, LH分泌に対する去勢による促進的効果と授乳による抑制的効果を同時に作用せしめたところ, 去勢によるFSH, LH含有量の増加は, 充分な授乳によって強く抑制されることが確認された. 此の機序の解明は性機能調節の上で重要な手がかりを与えるものと思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-03-01
著者
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