妊娠中毒症後遺症に関する研究
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概要
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妊娠中毒症は分娩後急速に治癒して行くものと考えられていたが, 近年中毒症後遺症の存在が注目されて来た. 然しこのような後遺症の臨床観察が不十分で, 治療法に決った方策が少ない. 今回当教室で最近10年間に入院分娩したもので後遺症を認めた233例の妊娠中毒症との関係及び後遺症のfollow upの成績について検討を行ない次の知見を得た. 妊娠中の高血圧が後遺するものが最も多く, 高血圧を示したものは84.6%であった. 既往歴家族歴で高血圧関連の疾患は後遺症に多く, 脹底検査で眼底血管硬化所見を有するものは高血圧を残しやすい. 産婦が退院する産褥7日目前後に治療により中毒症状が消失しても, その後血圧上昇し後遺するものが多く, 1週目の症状消失が産褥1ヵ月目まで続いているか否かの確認が必要である. 出生児の未熟頻度は高く, 経産婦にその傾向が強い. 後遺症をfollow upして症状が消失しているのは30%で, 蛋白尿の消失率は高いが高血圧は固定悪化するので, 後遺症発見後も高血圧の管理を要する. 更に中毒症分娩が度重なると心循環系の負荷が増大し心電図異常が現れ, 又胎児発育障害をひきおこすことが多い. 妊娠中毒症の治療は後遺症の予防になるが, 症状の消失が後遺症発生を予防したことにはならぬ. 又中毒症のなかには諸種降圧療法でも効果の少ないものがかなりある. これらのものは当教室独特の絶食療法が降圧に有効で, これに食餌療法と降圧療法を併用することにより絶食療法で得た正常血圧を維持出来るようである.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-03-01