周産期の児血中ガスおよびpHに関する研究
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概要
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新生児早期は肺呼吸への転換期で, この間の児血中酸素・炭酸ガス分圧の変動は当然予想される生理現象であり, これらの値とPHを同時に測定すれば緩衝系の動態をも同時に理解することができ, さらにこれから一連の正常な指標を見出すこともできる. 著者はこの指標を通じて産科的諸因子が児血中pO_2, pCO_2, pHにどのような影響をもたらすかを検索する目的で母体血, 臍帯血及び娩出一定時間後の児末梢血を嫌気的に採血し測定した. そこで厳選した全く正常な10例の各値を求め対照 (正常) 群とし, 症例別に分けた各因子との関係を調べた. 妊娠中毒症の母から生れた児の臍帯血pO_2, pCO_2, pHは推計学的に有意差を示すものが多い. このことは胎盤機能低下や, 児の代謝障害の程度を表わすものと考えられ, 中毒症が亢ずると子宮内胎児の死亡や未熟児が起り易く, 新生児はそれだけ代謝性因子の負担増からAcidosisを持続することになる. 分娩様式は臍帯血に何らの影響を及ぼさないと考えられるが, 帝王切開分娩による児では娩出15分後のpO_2にのみ低値を認めたから, 帝切娩出児に対しては直後の気道確保が大切である. 酸素母体投与時に臍静脈血pO_2が上昇を示したのは臍帯巻絡を伴った症例群だけであり, 胎盤が単なるフィルターの役をしているのでない事を示すと共に, 差はないまでも逆に臍静脈血pO_2が僅かながら低い傾向を示した (児心音変化後投与) 群や, 臍動静脈血の双方に声の低値とpCO_2の高値を来たした (骨盤位分娩への投与) 群のあることは, 酸素投与が胎児血中のpO_2を上昇させるとは限らず, 逆効果のみられることを充分念頭において処理しなければならない. 一般に予定日超過・高年初産の母体疾患はそれぞれ単独では影響因子とはなり得ないようであるが, Apgar Score7点以下の各症例の影響因子を分析してみると, 他の合併症が加ったために分娩遷延を招いたときは, 呼吸性Acidosisをもたらす因子となり得る.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-12-01